「子どもが39℃出てるんですが、坐薬使っていいですか?」「病院行ったほうがいいですか?」——こういう問い合わせ、薬局にいると本当に多いですよね。特に夕方から夜にかけて、保護者の声には焦りが滲んでいることが少なくありません。
発熱は保護者が最も不安を感じやすい症状の一つです。そして多くの場合、保護者は「熱の数値」で焦っています。「38℃を超えた」「39℃になった」——その数字だけを見て、パニックになっている保護者を私たちは日常的に目にします。
判断のカギは熱の高さではなく、子どもの「全身状態」です。この切り口で伝えると、保護者の焦りを落ち着かせながら的確な行動を促しやすくなります。
目次
まず確認すること——電話・窓口で聞くべき5項目
保護者から発熱の相談を受けたら、以下の5項目を必ず確認しましょう。
| 確認項目 | 聞き方の例 | 確認する理由 |
|---|---|---|
| 年齢・月齢 | 「お子さんは何歳ですか?」「生後何か月ですか?」 | 生後4か月未満は重症感染症のリスクが高く、即受診が必要 |
| 体温と経過 | 「いま何度くらいですか?いつ頃から出ましたか?」 | 熱の推移で病態を推測。急激な上昇は熱性けいれんのリスク |
| 全身状態 | 「機嫌はどうですか?水分は摂れていますか?」 | 最も重要。熱より全身状態が生命徴候を反映 |
| ほかの症状 | 「咳・嘔吐・発疹など、気になる症状はありますか?」 | 合併症状で重症度を判断 |
| 既往歴・手持ち薬 | 「アレルギーはありますか?解熱剤は手元にありますか?」 | 慢性的な疾患や、手持ち薬の期限・重複投与を確認 |

ポッポ先生
電話では保護者の観察力に頼る部分が大きいですね。“起こしたときに目が合いますか?””少しでも水分は飲めていますか?””遊ぶ様子はありますか?”——こうやって具体的に聞くと、保護者も答えやすくなります。
全身状態って、電話だと判断しにくくないですか?

オカメインコ
受診勧奨すべきケース——ここは迷わず「受診してください」
以下に一つでも当てはまる場合は、受診を強く勧めてください。「様子を見て」ではなく、「今すぐ」または「今夜中に」という言葉を添えましょう。
🚨 すぐ受診を勧めるケース(救急車を要検討)
- 生後4か月未満の発熱(37.5℃以上)——月齢が低いほど重症感染のリスクが高い
- けいれんが起きた・起きたことがある——熱性けいれんの可能性。初回は必ず受診
- 意識障害——「ぼーっとしている」「呼んでも反応がない」
- 呼吸困難——「肩で呼吸」「鼻をひくひくさせている」
⚠️ 今夜中に受診を勧めるケース
- ぐったりして反応が鈍い——起こしても目が合わない
- 顔色が悪い——青白い・まだら模様(大理石様)
- 水分がまったく摂れない——6時間以上おしっこが出ていない
- 強い頭痛・首の硬直——髄膜炎の可能性
“ぐったり”と”寝ている”の区別を保護者にどう聞けばいいですか?

オカメインコ

ポッポ先生
“起こしたとき、目が合いますか?反応はどうですか?”と聞いてください。眠いだけなら起こせば反応しますが、ぐったりは起こしても目に力がない状態です。保護者が”いつもと違う”と感じている場合は、その直感はかなり正確なので、受診を勧めましょう。
「朝まで様子見してよさそう」の判断軸——4つのチェック
以下の4つが保てている場合は翌朝のかかりつけ受診で問題ありません。保護者にも自信を持って「朝まで大丈夫ですよ」と伝えられます。
✅ 朝まで待てる4つの基準(FLACC尺度の簡易版)
- 機嫌(Face/表情)——少しあやすと反応がある。泣いても抱っこで落ち着く
- 飲める(Liquids/液体摂取)——少量ずつでも水分が摂れている。おしっこが6時間以内に出ている
- 遊べる(Activity/活動性)——少しでも好きなものに反応する
- 眠れる(Cry/Comfort)——ぐずりながらでも寝られている
必ず添える一言:「待っている間に状態が変わったら——ぐったりしてきた、顔色がおかしい——そのときは時間に関係なく受診してくださいね」
解熱鎮痛薬の情報提供——保護者からよく聞かれるポイント
ここは薬剤師の真骨頂です。発熱の相談で最も多い質問は「坐薬使っていいですか?」です。
“何度になったら使えばいい?”って聞かれたとき、どう答えてますか?

オカメインコ

ポッポ先生
“38.5℃以上が目安ですが、数字よりお子さんのつらさで判断してください”と伝えています。39℃あっても眠れているなら無理に使わなくてOK、38℃台でもつらそうなら使ってよいです。
保護者に伝えるべきポイント一覧
| 項目 | 伝え方 |
|---|---|
| 使用間隔 | 「6〜8時間はあけてくださいね。頻繁に使うと副作用のリスクが上がります」 |
| 効果の限界 | 「熱を下げる薬であって、病気を治す薬ではないです。効果が切れれば熱は戻りますが、それは正常な反応です」 |
| 重複投与の注意 | 「市販のかぜ薬にもアセトアミノフェンが入っていることがあるので、一緒に使わないでくださいね」 |
| 坐薬が出てきた場合 | 「入れた直後に出たらもう一度入れてOK。30分以上経っていればほぼ吸収されています」 |
| きょうだいの薬 | 「解熱鎮痛坐薬であれば体重に合った量なら使えます。それ以外の処方薬は使わないでください」 |
保護者が安心できるクロージング——最後にこう伝える
相談を終えるときは、保護者の不安を下げる一言を添えましょう。
- 「お子さんの様子を見れている時点で大丈夫です。水分がとれて眠れていれば、明日の朝にかかりつけの先生に診てもらってくださいね」
- 判断に迷う場合は、#8000(小児救急電話相談)への案内も有効です。「迷ったら#8000に電話できますよ。小児科医や看護師が対応してくれます」

ポッポ先生
保護者は“子どものためにできることがある”とわかると安心します。”水分とらせて、薄着にして、様子を見てあげてくださいね”——これだけでも行動の指針ができて、焦りが減りますよ。
まとめ——この相談で押さえるべきポイント
- まず全身状態を確認する——機嫌・飲める・遊べる・眠れるの4つ
- ぐったり・顔色不良・呼吸異常・生後4か月未満 → 受診勧奨
- 全身状態が保てていれば「翌朝かかりつけへ」と伝えてOK
- 解熱鎮痛薬は「つらさ」で判断。38.5℃は目安にすぎない
- 判断に迷ったら#8000を案内
参考情報
#8000 小児救急電話相談
- 📞 電話番号: #8000(プッシュ回線・携帯電話)
- ⏰ 対応時間: 都道府県により異なります
- 💰 相談料: 無料(通話料は自己負担)
本記事は薬剤師向けの実践マニュアルとして作成しました。保護者の不安を和らげつつ、適切な医療行動を促す——そのバランスが、質の高い薬局業務につながります。


