「うちの薬局、来年度から基本料が変わるかもしれない」
そんな不安を感じている方へ。答申が出ました。予想を超えた数字と、その先にある構造変化を一緒に整理します。
令和8年2月13日、中医協の答申が出ました。私はその数字を見て、思わず画面を二度見しました。
門前薬局等立地依存減算:マイナス15点。
私の周りでは「5点から10点の間じゃないか」という見立てが大勢を占めていました。それが15点。処方箋1枚あたり150円の減収です。月600枚受け付ける薬局であれば、年間108万円のインパクトになります。
ただ、「うちは既存店だから関係ない」では済まない話が、この改定には含まれています。業界全体の構造変化という視点で、一緒に読み解いていきましょう。
この記事は中医協答申(令和8年2月13日付)をもとにしています。最終確認は厚生労働省の告示・通知および各地方厚生局で必ず行ってください。
目次
改定後の点数一覧——まず数字を押さえる

私ならまず、点数表の全体像から確認します。細部に入る前に「自分の薬局がどの区分にいるか」を頭に入れておかないと、個別の変更点を読んでも迷子になります。
| 区分 | 改定後 | 現行 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 調剤基本料1 | 47点 | 45点 | +2点 |
| 調剤基本料2 | 30点 | 29点 | +1点 |
| 調剤基本料3 イ | 25点 | 24点 | +1点 |
| 調剤基本料3 ロ | 20点 | 19点 | +1点 |
| 調剤基本料3 ハ | 37点 | 35点 | +2点 |
全区分で点数が引き上げられます。調剤基本料1および調剤基本料3のハの引上げ幅が大きいのは、面分業推進という政策意図が乗っているためです。
ただし、点数が上がっても区分が下がれば収益は下がります。「点数アップ」の情報だけ取り出して安心するのは、危ない読み方です。
うちは調剤基本料1だから、2点アップだけ気にすればいいですよね?

オカメインコ

ポッポ先生
調剤基本料1の施設基準を今後も維持できるかどうか、確認が必要です。施設基準の変更と新たな減算規定が同時に動いています。「今の区分が変わらないか」という視点で、この後の内容を読んでみてください。
調剤基本料2の施設基準変更——「月1,800回」「集中率85%」の壁が広がった

ここ、迷いやすいところです。調剤基本料2の算定対象が広がります。自分の薬局が新たに対象になるかどうか、現行との比較で確認してください。
| パターン | 現行(改定前) | 改定後 |
|---|---|---|
| A(大量・集中型) | 月4,000回超 + 上位3医療機関70%超 | 同左(医療モール対策あり) |
| B(中量・集中型) | 月2,000回超 + 集中率85%超 | 月1,800回超 + 集中率85%超 |
| C(中量・超集中型) | 月1,800回超 + 集中率95%超 | 削除・Bに統合 |
| D(都市部新規・少量) | なし | 新設:都市部 + 月600回超 + 集中率85%超 + 500m以内に他薬局あり |
「月1,900回・集中率90%」という薬局は、現行では対象外でした。改定後は対象になります。心当たりはありませんか。
経過措置(重要)
令和8年5月31日において、現に処方箋の受付回数が月1,800枚以下として届け出ており、その後も継続的に月1,800枚以下であるものについては、当面の間、集中率を85%以下とみなす。
※1,800枚を超えている薬局は対象外です。
うちは月1,900回で集中率88%くらい。これって基本料2になるんでしょうか…

オカメインコ

ポッポ先生
改定後の施設基準では、1,800回超かつ集中率85%超に該当する可能性が高いです。経過措置は「1,800枚以下の届出」が条件ですから、1,900回では対象になりません。集中率を下げる手段(面分業の推進、在宅業務の拡充など)を含め、今のうちに選択肢を整理しておくのが安全です。
門前薬局等立地依存減算——15点という数字が意味するもの

今回の改定で最もインパクトが大きい新設項目です。
減算内容:所定点数から 15点(=150円) を減算
答申が出る前、私の周りでは「5〜10点の範囲」という見立てが多かったです。15点はそれを大幅に上回ります。「新規出店を本気で抑制しにきている」というのが、私の最初の印象です。
減算対象の条件
対象は以下のいずれかに該当する新規開設の薬局です(特別調剤基本料Aを算定しているものを除く)。
パターン①:病院門前の密集地域(都市部)
以下の4条件すべてを満たすこと。
- 別表の都市部(政令指定都市・東京23区)に所在
- 水平距離500m以内に他の保険薬局がある
- 集中率85%超
- 次のいずれかに該当:
①許可病床200床以上の病院の敷地境界線から100m以内に所在し、当該区域内・病院敷地内に他の薬局が2以上ある
②周囲50m以内に他の薬局が2以上ある
③周囲50m以内の薬局が②に該当する
パターン②:医療モール・同一敷地内
以下の2条件両方を満たすこと。
- 集中率85%超
- 保険医療機関と同一敷地内または同一建物内に所在
都市部として定義される地域(別表第三の一)
札幌市 / 仙台市 / さいたま市 / 千葉市 / 東京23区 / 横浜市・川崎市・相模原市 / 新潟市 / 静岡市・浜松市 / 名古屋市 / 京都市 / 大阪市・堺市 / 神戸市 / 岡山市 / 広島市 / 北九州市・福岡市 / 熊本市
政令指定都市と東京23区が対象です。どうですか?ご自身の薬局は該当しますか。
経過措置(既存薬局への影響は当面ない)
令和8年5月31日において現に健康保険法第63条第3項第1号の指定を受けている保険薬局については、当面の間、この規定に該当しないものとする。
既存薬局は当面の間、この減算の対象外です。ただし「当面の間」に期限の明示はありません。中長期的な経営判断では、将来的に経過措置が終了する可能性も念頭に置いておくことが必要になります。
新規開設だけが対象なら、今の薬局で働く私には直接関係ないのでは…?

オカメインコ

ポッポ先生
今の店舗への直接影響はないです。ただ、この減算がグループ全体の出店戦略やM&Aによる業界再編に影響を与えると、働く環境の変化として間接的に波及します。次のセクションで整理しますね。
医療モール対策と集中率の計算方法変更——見落としやすいここを整理する

現場だとここで詰まりがちです。集中率の計算ルールが変わります。
医療モール内の複数医療機関は「1つの医療機関」とみなす
改定前は、医療モール内に内科・整形外科・皮膚科が集まっていても、それぞれ別にカウントしていました。このため、上位3医療機関の集中率70%という基準をすり抜けるケースが問題視されていました。
改定後:同一建物内または同一敷地内にある複数の保険医療機関の処方箋を合算し、「1つの医療機関からの処方箋」とみなして集中率を計算します。
「見た目は面分業をしているつもり」でも、集中率の計算上は実態と乖離していたケースが対象です。
介護施設・高齢者向け居住施設の入居者への処方箋
在宅業務に力を入れている薬局には関係が深い変更です。
| 項目 | 取扱い |
|---|---|
| 処方箋受付回数 | 算入する |
| 集中率の計算 | 除外する(ただし単一建物診療患者・居住者が1人の場合を除く) |
対象施設:介護老人福祉施設 / 介護老人保健施設 / 介護医療院 / サービス付き高齢者向け住宅 / 有料老人ホーム / 養護老人ホーム / 軽費老人ホーム / 認知症高齢者グループホーム
在宅患者さんが増えると受付回数が増えて、基本料2の要件に引っかかりやすくなるってこと…?

オカメインコ

ポッポ先生
そのとおりです。ただし集中率の計算からは除外されるので、処方箋が1種類の医療機関に偏っている薬局にとっては、在宅を増やすことが集中率の分散につながる面もあります。両方の数字を同時に追いながら確認するのが大事ですね。
大手チェーンとM&A——構造変化の「その先」を考える

大手チェーンが直面する構造的な問題
今回の改定が大手チェーン薬局に与える影響は、数字以上に大きいと私は感じています。大手チェーンの多くは、処方箋受付回数やグループ合計回数の要件から、調剤基本料1をそもそも取りにくい構造にあります。その上で収益を伸ばすためにとってきた戦略が、「新規出店による処方箋枚数の拡大」でした。
今回の改定が刺さるのは、まさにここです。都市部で門前や医療モールに新規出店しようとすると、条件が揃えば処方箋1枚ごとに150円の減収が発生します。月1,000枚なら月15万円、年間180万円。これが出店コストとして毎年積み重なります。
M&Aへの誘導という構造
ここが重要なポイントです。答申の経過措置を読むと、令和8年5月31日時点で既に指定を受けている薬局には、立地依存減算は当面の間適用されないとあります。
つまり、新規で出店するのではなく、既存の薬局をM&Aで取得する場合は、少なくとも当面の間この減算を受けない可能性があります。
これは偶然の産物ではなく、制度設計として「新規参入よりも既存のかかりつけ機能を持つ薬局の承継を促す」意図が見える、と私は読んでいます。実際、大手チェーンの多くはここ数年、M&Aによる店舗取得戦略にシフトしています(M&A関連の業界情報からも確認できます)。今回の改定がこの流れをさらに後押しする可能性は十分にあります。
それって…小さな薬局がどんどん大手に吸収されていくってこと?

オカメインコ

ポッポ先生
可能性としては十分あります。後継者問題を抱える薬局には事業承継の選択肢が広がるという側面もある一方で、地域の独立系薬局が大手グループに集約されていく流れが加速するかもしれません。これが地域医療にとって良いか悪いか、私には断言できません。ただ、「自分の薬局のこれからをどう考えるか」という問いを、改定の数字とセットで持っておくことは必要だと思います。
まとめ——自薬局の確認チェックリスト

改定の詳細は、厚生労働省の告示・通知が正式に出た段階で確定します。「確定情報を待ちながら、選択肢だけは今から整理しておく」というのが、いまの状況で安全な動き方だと思います。
私ならまず、この順番で確認します。
① 自薬局の区分に影響する変更はあるか
- 月間処方箋受付回数は何回か(1,800回の壁を確認)
- 処方箋集中率は何%か(85%・95%の変化を確認)
- 医療モール内に所在しているか(集中率の計算方法が変わる)
- 経過措置の適用対象か(令和8年5月31日時点での届出状況)
② 立地依存減算の影響はあるか(新規開設の場合)
- 都市部(別表の政令指定都市・東京23区)に所在しているか
- 500m以内に他の薬局があるか
- 集中率85%を超えるか
- 保険医療機関と同一建物・同一敷地内か
③ グループ全体の受付回数要件の確認
- 同一グループの月間処方箋受付回数(3.5万回・4万回・40万回の各基準との関係)
- 店舗数要件の削除による基本料3ロ・ハへの影響
④ 在宅業務との関係
- 集中率計算から除外できる施設入居者の処方箋があるか
- 受付回数増加による区分変更リスクはないか
今回の改定は、「立地依存からの脱却」という方向性を10年かけて積み上げてきた政策の一つの到達点だと感じています。15点という数字が、その本気度の表れだと私は読んでいます。
施設基準の届出や経営判断は、告示・通知の確定後に行ってください。不確実な点について先行して動くのは、むしろリスクになります。
参考資料(一次情報)
- 中央社会保険医療協議会 総会(令和8年2月13日)「個別改定項目について」(厚生労働省)
- 中央社会保険医療協議会「調剤基本料について」(令和7年1月時点)
- 厚生労働省 診療報酬改定関連資料:https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00286.html
※施設基準の詳細・最終点数は告示・通知で確定します。必ず各地方厚生局または薬局担当窓口に確認してください。


