「うちの薬局、来年度から基本料が変わるかもしれない」
そんな不安を感じている方、いらっしゃいませんか。
令和8年度の診療報酬改定では、調剤基本料の算定要件が大きく見直されます。特に都市部で門前立地の薬局や、医療モール内の薬局は、施設基準の変更を細かく確認しておく必要があります。
私自身、改定資料を読み込んでいて「ここ、現場だと判断に迷いそうだな」と感じる箇所がいくつもありました。この記事では、中医協の資料をもとに、調剤基本料の変更点を施設基準の原文も交えながら整理していきます。
目次
1. 改定の背景 ─「立地依存」からの脱却

今回の改定の根底にあるのは、「患者のための薬局ビジョン」策定から10年という節目です。
でも正直、「立地依存からの脱却」って言われても、門前だからこそ患者さんが来てくれるわけで…

オカメインコ

ポッポ先生
その気持ちはわかります。ただ、データを見ると課題が浮かび上がってきます。約7割の病院には門前薬局が存在し、処方箋集中率が高い薬局ほど備蓄品目数が少ない傾向にあるんです。
医療経済実態調査によると、調剤基本料2を算定する薬局の損益差額が最も高く、一方で特別調剤基本料Aを算定する薬局は令和6年度改定後に損益率がマイナスに転じています。
いまの状況だと、立地の良さが経営を支え、対人業務への投資が後回しになりやすい構造があります。今回の改定は、この構造にメスを入れるものと言えます。
2. 調剤基本料の点数引上げ(物価高騰対応)

まず押さえたいのは、全区分で点数が引き上げられる点です。物価高騰による物件費負担の増加を踏まえた対応で、調剤基本料1および調剤基本料3のハは「面分業推進」の観点からも引上げ幅が大きくなっています。
【現行の調剤基本料(処方箋受付1回につき)】
| 区分 | 現行点数 | 改定後 |
|---|---|---|
| 調剤基本料1 | 45点 | 引上げ |
| 調剤基本料2 | 29点 | 引上げ |
| 調剤基本料3イ | 24点 | 引上げ |
| 調剤基本料3ロ | 19点 | 引上げ |
| 調剤基本料3ハ | 35点 | 引上げ |
点数が上がるのは嬉しいけど、うちが該当する区分が変わったら意味ないですよね…

オカメインコ

ポッポ先生
そこが今回の改定のポイントです。次のセクションで、施設基準の変更を詳しく見ていきましょう。
3. 調剤基本料2の施設基準見直し ─ ここ、要注意です

調剤基本料2の算定対象が拡大されます。私ならまず、自薬局の処方箋受付回数と集中率を改めて確認します。
3-1. 現行からの主な変更点
施設基準の原文を踏まえると、以下のように整理できます。
| 現行 | 改定後 |
|---|---|
| 処方箋受付回数 月2,000回超 かつ 集中率85%超 | 処方箋受付回数 月1,800回超 かつ 集中率85%超 |
| 処方箋受付回数 月1,800回超 かつ 集中率95%超 | (削除・上記に統合) |
| ─ | 【新設】都市部の新規開設薬局で、月600回超 かつ 集中率85%超 かつ 500m以内に他薬局あり |
誤解されやすいので先に言うと、「月1,800回超〜2,000回以下」の薬局が新たに対象になるわけではありません。正確には、これまで「95%超」だった集中率要件が「85%超」に引き下げられたことで、対象範囲が広がったということです。
3-2. 施設基準の原文(改定案)
【調剤基本料2の施設基準】
次のいずれかに該当する保険薬局であること。
ロ 処方箋の受付回数が一月に千八百回を超えること(イに該当する場合を除き、特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合が八割五分を超える場合に限る。)
ハ 処方箋の受付回数が一月に六百回を超えること(イ又はロに該当する場合を除き、特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合が八割五分を超える場合(当該保険薬局が別表第●に掲げる地域に所在し、かつ、水平距離五百メートル以内に他の保険薬局がある場合に限る。)に限る。)
うちは月1,900回で集中率90%くらいなんですが…これって該当しますか?

オカメインコ

ポッポ先生
現行では集中率95%超が要件だったので対象外でしたが、改定後は85%超に変わるため該当する可能性が高いです。ただし、経過措置があるので次も確認してください。
3-3. 経過措置
【経過措置】
令和八年五月三十一日において、現に処方箋の受付回数が一月当たり千八百枚以下であるとして届け出ている保険薬局であって、その後も一月当たりの処方箋の受付回数が継続的に千八百枚以下であるものについては、当面の間、特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合を八割五分以下とみなす。
4. 都市部の定義と「門前薬局等立地依存減算」の新設

今回の改定で新たに「都市部」の定義が設けられ、都市部の新規開設薬局に対する減算措置が導入されます。
4-1. 都市部として定義される地域
【別表第● 厚生労働大臣が定める地域】
一 北海道札幌市 二 宮城県仙台市 三 埼玉県さいたま市 四 千葉県千葉市 五 東京都特別区(23区) 六 神奈川県横浜市、川崎市及び相模原市 七 新潟県新潟市 八 静岡県静岡市及び浜松市 九 愛知県名古屋市 十 京都府京都市 十一 大阪府大阪市及び堺市 十二 兵庫県神戸市 十三 岡山県岡山市 十四 広島県広島市 十五 福岡県北九州市及び福岡市 十六 熊本県熊本市
政令指定都市と東京23区が対象です。どうですか?ご自身の薬局は該当しますか?
4-2. 門前薬局等立地依存減算の要件
新規開設薬局のうち、以下のいずれかに該当する場合は減算の対象となります。現場だとここで詰まりがちですので、整理しておきます。
【パターン①:病院門前の密集地域】
- 都市部(別表第●)に所在
- 水平距離500m以内に他の保険薬局がある
- 処方箋集中率が一定割合を超える
- 以下のいずれかに該当:
- 200床以上の病院敷地境界線から100m以内に所在し、その区域内・病院敷地内に他の薬局が2以上ある
- 薬局の周囲50m以内に他の薬局が2以上ある
- 周囲50m以内にある他の薬局が上記に該当する
【パターン②:医療モール・同一敷地内】
- 処方箋集中率が一定割合を超える
- 保険医療機関と同一建物内または同一敷地内に所在
これって、既存の薬局も対象になるんですか?

オカメインコ

ポッポ先生
いいえ。令和8年5月31日時点で既に指定を受けている薬局は、当面の間、減算の対象外です。あくまで「新規開設」が対象になります。
5. 処方箋集中率の計算方法の変更 ─ 医療モール対策

ここ、迷いやすいところです。処方箋集中率の計算方法が複数の点で変更されます。
5-1. 医療モールの取扱い
【改定案】
一つの建物内又は一つの敷地内に複数の保険医療機関がある場合においては、当該複数の保険医療機関に係る処方箋の受付回数を全て合算し、特定の保険医療機関に係る処方箋の受付回数とみなして、処方箋集中率を算出する。
これまで、医療モール内の複数クリニックからの処方箋は別々にカウントされていたため、上位3医療機関の集中率70%という基準をすり抜けるケースがありました。今後は医療モール全体を「1つの医療機関」とみなして計算します。
5-2. 施設入居者の処方箋の取扱い
介護保険施設や高齢者向け居住施設の入居者に交付された処方箋について、取扱いが変わります。
- 処方箋受付回数:算入する
- 処方箋集中率の計算:除外する(ただし単一建物診療患者・単一建物居住者が1人の場合は除く)
【対象となる施設】
介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、認知症高齢者グループホーム
在宅業務に注力している薬局にとっては、集中率計算上有利になる可能性があります。ただし、受付回数自体はカウントされる点に注意が必要です。
6. 調剤基本料3の施設基準変更

大型チェーン薬局に関係する調剤基本料3についても見直しがあります。
6-1. 調剤基本料3イの変更
【改定案】
同一グループの保険薬局における処方箋の受付回数の合計が一月に三万五千回を超え、四十万回以下のグループに属する保険薬局のうち、特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合が八割五分を超える又は特定の保険医療機関との間で不動産の賃貸借取引があること。
現行では「95%超」だった集中率要件が「85%超」に引き下げられます。
6-2. 店舗数要件の削除
調剤基本料3のロ及びハの施設基準から、「同一グループの店舗数が300以上」という要件が削除されます。
これにより、店舗数ではなく処方箋受付回数(月40万回超)のみで判定されることになります。
7. 特別調剤基本料Aの見直し

いわゆる敷地内薬局に関する評価についても、複数の変更があります。
7-1. へき地等の例外規定(新設)
医療資源の乏しい地域への配慮として、以下の全ての条件を満たす場合は、特別調剤基本料Aではなく調剤基本料1を算定できるようになります。
- 地方公共団体が所有する土地に所在する診療所の敷地内に所在すること
- 当該診療所がへき地医療提供のため都道府県知事に認められていること
- 薬局から水平距離4km以内に他の保険薬局がないこと
へき地で薬局を維持するのは本当に大変ですよね…

オカメインコ

ポッポ先生
中医協でも実際の事例が報告されていて、自治体が薬局誘致に苦労したケースがあります。地域医療を守る観点から、例外規定が設けられた形です。
7-2. オンライン診療受診施設への対応(新設)
保険薬局と同一敷地内においてオンライン診療受診施設を設置する場合、特別調剤基本料Aを算定することになります。
しないほうが安全なのは、安易にオンライン診療受診施設を併設することです。施設の設置を検討している場合は、調剤基本料への影響を必ず確認してください。
7-3. 建物内診療所の経過措置
【経過措置】
告示日において当該保険薬局の所在する建物内に保険医療機関(診療所に限る。)が所在している保険薬局については、告示日以降、新たに他の保険医療機関と不動産取引等その他の特別な関係を有しない場合に限り、当面の間、特別調剤基本料Aに該当しないものとする。
8. まとめ ─ 確認すべきポイント

今回の改定は、立地依存型の薬局経営から対人業務重視の経営への転換を促すものです。自薬局の状況を確認する際は、以下の点を優先的にチェックすることをお勧めします。
【確認チェックリスト】
- 月間処方箋受付回数は何回か(1,800回、2,000回、600回の各基準との関係)
- 処方箋集中率は何%か(85%、95%の各基準との関係)
- 医療モール内に所在しているか(集中率計算方法の変更影響)
- 都市部(政令指定都市・東京23区)に所在しているか
- 500m以内に他の薬局があるか(新規開設の場合)
- グループ全体の月間処方箋受付回数(3.5万回、4万回、40万回の各基準との関係)
- 経過措置の対象となるか
改定の詳細は、厚生労働省の告示・通知が出た段階で確定します。この記事は中医協資料(令和7年1月時点)をもとにしていますので、最新情報は厚生労働省ホームページや各地方厚生局で確認されることをお勧めします。
【参考資料】
- 中央社会保険医療協議会 総会資料「調剤基本料について」
- 令和8年度診療報酬改定 短冊(調剤基本料関連)
- 医療経済実態調査(第25回)


