薬歴記載はAIで効率化!! 気になる方はこちらを!

AI薬歴システムは薬剤師を「何から」解放するのか——業務効率化の先にある本当の課題

「AI薬歴で業務が楽になる」という話、最近よく耳にしませんか。

服薬指導の会話を録音して、AIがSOAP形式で薬歴を自動生成してくれる。薬歴作成にかかる時間が約60%削減できたという報告もあります。忙しい現場にとって、これは魅力的な話です。

ただ、私はここで一度立ち止まって考えたいのです。AIが書いてくれた薬歴は、「次に来局したときの私」や「引き継いだ同僚」にとって、本当に役立つものになっているでしょうか。

この記事では、AI薬歴システムの現状と可能性を整理しながら、「薬歴の本来の目的」という視点から、導入・運用時に押さえておきたいポイントをお伝えします。


AI薬歴システムが薬局現場にやってきた

2024年から2025年にかけて、AI薬歴システムの選択肢は一気に広がりました。ウィーメックス、三菱電機ITソリューションズ、カケハシなど、大手各社が続々とサービスを展開しています。

でも、実際どのくらい使えるものなんですか? うちの薬局でも話が出てるんですけど、正直イメージがわかなくて……

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

トライアルデータでは、薬歴1件あたりの記載時間が平均3.9分から1.5分に短縮されたという報告があります(※1)。約60%の削減ですね。ただし、これは「下書き生成までの時間」であって、「確認・修正を含めた総時間」ではない点に注意が必要です。

※1 ウィーメックス社の社内検証データ
詳細:https://www.phchd.com/jp/medicom/pharmacies/ai-medicationhistory

現在のAI薬歴システムの主な機能を整理すると、以下のようになります。

機能内容
音声認識・文字起こし服薬指導中の会話をテキスト化
SOAP形式への変換S(主観)・O(客観)・A(評価)・P(計画)に自動分類
服薬指導ポイントの提案患者情報や処方歴から指導すべき内容を提示
在宅報告書の作成支援訪問時の記録をフォーマット化

これだけ見ると、「対物業務から対人業務へ」という流れを後押しする強力なツールに見えます。実際、患者さんとの会話に集中できるようになったという声もあります。

なお、薬剤師が薬歴記載業務にかける時間は1日あたり約1時間25分というデータもあり(※2)、この負担軽減への期待は大きいものがあります。

※2 厚生労働省「薬剤師の需給動向把握事業における調査結果概要」(令和3年)
ウィーメックス社のプレスリリースより引用:https://www.wemex.com/news/20240829_120.html

ここ、心当たりありませんか? 服薬指導中にメモを取ることに気を取られて、患者さんの表情を見逃していたこと。AIがその部分を肩代わりしてくれるなら、確かにメリットは大きいです。

ただし——ここからが大事なところです。


薬歴の「本来の目的」を見失わないために

医療分野のAI活用研究で、興味深い指摘があります。米国の内科医Burstein氏は、医師向けのAIスクライブ(診療録自動作成システム)について、こう警鐘を鳴らしています。

私たちはバーンアウト対策としてAIスクライブを歓迎しているが、臨床記録の「本来の目的と機能」を見失ってはいないか。

臨床記録には3つの重要な機能があるとされています。

  1. 記録時の思考整理——情報を記録する過程で、臨床的な判断を行う
  2. 次回診療時の情報活用——前回の記録を見て、継続的なケアにつなげる
  3. 他の医療者との情報共有——チーム医療の基盤になる

これ、薬歴にもそのまま当てはまりませんか。

うーん、でも薬歴って正直、算定要件を満たすために書いてる部分もありますよね……

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

その感覚、実は多くの薬剤師が抱えているものです。ただ、本来薬歴は「継続的な薬学的管理」のための記録。次回来局時に「前回こういう状況だったから、今回はここを確認しよう」と考えるための土台になるものです。

私ならまず確認するのは、AIが生成した薬歴に「次回への申し送り」がちゃんと入っているかどうかです。SOAPの「P(計画)」の部分ですね。ここが空欄だったり、定型文だけになっていたりすると、せっかくの記録が「死んだ情報」になってしまいます。

逆に言うと、AIが生成した下書きをそのまま承認してしまうと、薬剤師の思考過程が記録に残らないリスクがあるのです。


AI薬歴運用で気をつけたいポイント

誤解されやすいので先に言うと、AI薬歴システム自体を否定しているわけではありません。問題は「どう使うか」です。

ハルシネーション(誤情報生成)への対応

AI研究では、AIスクライブのハルシネーション率は約1〜3%と報告されています(※3)。「たった1〜3%」と思うかもしれませんが、医療の現場ではその1件が重大な問題につながる可能性があります。

※3 npj Digital Medicine掲載の研究より
詳細:https://www.nature.com/articles/s41746-025-01895-6

具体的にどんなミスが起きるんですか?

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

報告されている例としては、実際には行っていない身体所見の記載、患者と医療者の発言の混同、薬剤名や用量の誤記などがあります。特に「もっともらしく見える誤り」は発見が難しいので、注意が必要です。

現場だとここで詰まりがちです。忙しいときほど、AIの出力をざっと見て「まあいいか」と承認してしまいたくなる。でも、それが習慣化すると危険です。

確認すべきポイントのチェックリスト

私が意識しているのは、以下のような項目です。

  • S情報:患者さんが実際に言ったことと一致しているか
  • 用量・日数:数字が正確か(AIは数値を間違えやすい傾向がある)
  • 次回への申し送り(P):自分の判断・思考が反映されているか
  • 省略されていないか:重要な相談内容が抜け落ちていないか

研究によると、医療者が口頭で議論した問題の約50%が文書化されていないケースがあるとも報告されています(※4)。AIにもこの傾向がある可能性があり、「何が記録されなかったか」にも目を向ける必要があります。

※4 Medical Economics誌の記事より
詳細:https://www.medicaleconomics.com/view/are-ai-scribes-safe-

ただし、完璧を求めすぎないことも大切

それだけチェックするなら、結局手書きと変わらないんじゃないですか?

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

いい指摘ですね。すべての項目を毎回詳細にチェックするのは現実的ではありません。大切なのは、リスクの高い項目(用量、アレルギー、次回の注意点など)を優先的に確認する習慣をつけることです。

いまの状況だと、AI薬歴を「完成品」ではなく「下書き」として扱うスタンスが安全です。下書きだと思えば、確認・加筆するのは当然の工程になります。


これからのAI薬歴との付き合い方

Burstein氏の論文で印象的だったのは、「電子カルテ導入時と同じ轍を踏まないように」という指摘です。

電子カルテは当初、情報整理や共有の効率化が期待されていました。しかし実際には「note bloat(記録の肥大化)」という問題が生じ、かえって重要な情報が埋もれてしまう事態を招きました。

AI薬歴でも同じことが起こりえます。AIは情報を「たくさん」書くことは得意ですが、「何を残し、何を省くか」の判断は苦手です。結果として、読みにくい・使いにくい薬歴が量産される可能性があります。

じゃあ、どうすればいいんでしょう?

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

まずは短期的な効率化だけでなく、「3ヶ月後、1年後に自分や同僚がこの薬歴を見たとき、役立つか」という視点を持つことです。それから、AIの出力をカスタマイズできる設定があれば、自薬局の運用に合わせて調整することも有効です。

どうですか? AI薬歴の導入を検討している方も、すでに使い始めている方も、一度「何のために薬歴を書いているのか」を振り返ってみる価値はあると思います。

今後、AI薬歴システムの評価には、以下のような視点も必要になってくるでしょう。

  • 長期的な薬歴の質(他の薬剤師が読んで役立つか)
  • 継続的な薬学管理への貢献度
  • 薬剤師の臨床推論能力への影響

現時点では、こうした長期的な評価研究はまだ十分ではありません。だからこそ、現場で使いながら「これで本当に良いのか」を問い続ける姿勢が大切だと、私は考えています。


まとめ

AI薬歴システムは、薬歴作成の時間を大幅に短縮できる可能性を持ったツールです。忙しい現場で対人業務に集中する時間を確保するうえで、有効な選択肢になりえます。

ただし、薬歴の本来の目的——継続的な薬学的管理、次回への情報引き継ぎ、薬剤師の思考過程の記録——を見失わないことが前提です。

次の一歩として提案したいこと

  • AI生成の薬歴を「下書き」として扱い、必ず確認・加筆する運用ルールを決める
  • 特に「P(計画)」の部分に、自分の判断や次回への申し送りを追記する習慣をつける
  • 定期的に過去の薬歴を見返し、「これで次回に役立つか」をチェックする

より詳しい運用ガイドラインについては、各システムのマニュアルや日本薬剤師会の関連通知を確認することをお勧めします。不確実な点が多い分野だからこそ、現場からのフィードバックが今後の発展を左右するのだと思います。


参考情報

【論文・研究】

  • Burstein DS. Choosing Proper Frameworks and Outcomes to Assess the Use of AI Scribes. J Gen Intern Med. 2026. DOI: 10.1007/s11606-026-10176-1
  • Beyond human ears: navigating the uncharted risks of AI scribes in clinical practice. npj Digital Medicine. 2025.
    https://www.nature.com/articles/s41746-025-01895-6

【国内AI薬歴システム関連】

【薬歴の基本事項】

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