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調剤ベースアップ評価料の告示を読んだら「対象者」が想像以上にきつかった|管理薬剤師除外・40歳の壁・返還リスクを薬局目線で整理

調剤報酬改定2026で新設される「調剤ベースアップ評価料」。処方箋1枚あたり中央値3.9点——この数字だけ見ると「賃上げ原資が来る」と期待した方も多いと思います。私もそうでした。

ところが、告示の施設基準を読み込んでみたら、率直に言って”きつい”。何がきついかというと、誰が対象になるかの条件です。

  • 事業主・使用者・開設者・管理者 → 対象外
  • 40歳以上の薬剤師 → 対象外
  • 業務委託で勤務する者 → 対象外

つまり管理薬剤師は「管理者」として対象から外れるし、ベテラン薬剤師も年齢で線引きされます。いまの状況だと、「うちの薬局、対象者がほとんどいないのでは?」という薬局が出てもおかしくありません。

この記事では、告示の文面をもとに「対象者の線引き」「評価料で得た報酬の使途ルール」「余った場合の返還リスク」「法人内按分」など、現場が本当に知りたい論点を整理します。試算の前提が変わる部分もあるので、既存の「3.9点で足りるか」試算とセットで読んでいただけると判断しやすいはずです。


告示で見えた「対象職員」の線引き——管理薬剤師が外れる理由

まず、告示(第109条)の施設基準をそのまま整理します。

対象職員の定義:
当該保険薬局に勤務する職員のうち、以下を除いた者が「対象職員」です。

除外される者備考
事業主・使用者・開設者経営側
管理者管理薬剤師がここに該当
40歳以上の薬剤師年齢で線引き
業務委託により勤務する者派遣・委託スタッフ
本部職員・エリアマネージャー等他薬局が主たる勤務先で、当該薬局の調剤業務に直接従事していない管理的業務専従者

ここ、迷いやすいところです。「管理薬剤師=管理者」という整理は、医科・歯科との横並びで決まった経緯があります。NPhA(日本保険薬局協会)向けの厚労省説明会では「管理薬剤師は雇われの立場なのだから賃上げ対象では?」という声もあったようですが、最終的には医科歯科と足並みを揃えて「管理者=対象外」に落ち着いています。

でも…管理薬剤師って、実態は”雇われ”ですよね? 経営判断してるわけじゃないし、外されるのは納得いかないんですが……。

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

気持ちはわかります。ただ、告示上は「管理者」に含まれる以上、現時点では対象外です。ここを変えたいなら、次回改定に向けた要望ルートになります。今やるべきは、管理薬剤師を除いた上で”対象者が何人いるか”を先に数えることですね。

私なら、まず自薬局の職員リストを引っ張り出して、次の順で整理します。

  1. 薬剤師のうち40歳未満は何人か
  2. そのうち管理薬剤師を除くと何人残るか
  3. 事務職員(年齢問わず)は何人か
  4. 業務委託・派遣を除いた実数はいくつか

この「実数」が、試算の出発点になります。3.9点の試算を以前お見せしましたが、対象者の数が想定より少なければ、コスト側が下がるので評価料で足りる可能性は上がります。逆に言うと、対象者が少ない=賃上げの恩恵を受ける人が限られる、ということでもあります。


「40歳の壁」が生む不公平感——会社はどう対応するか

ここ、心当たりありませんか? 薬局で働いていて「あの人は対象、自分は対象外」となったときの空気感。

告示上、事務職員には年齢制限がありません。一方で、薬剤師は40歳以上が外れます。すると、こんな構図が起きます。

  • 39歳の薬剤師 → 対象(ベースアップの恩恵あり)
  • 40歳の薬剤師 → 対象外
  • 45歳の事務職員 → 対象

制度の趣旨としては「若手の処遇改善」「医療事務の賃金底上げ」を狙っているのだと思いますが、現場レベルでは不公平感が出やすい設計です。

正直、対象者だけ賃上げって、職場の雰囲気的にどうなんですか……。

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

そこは経営判断になりますね。大手チェーンなら「対象外の職員にも自社負担で同等の賃上げを実施する」という判断がありえます。ただし、中小薬局がそこまでの体力を持てるかは別の話です。ここは”評価料の原資”と”会社の持ち出し”を分けて考えないと、話が混ざります。

私ならまず、こう切り分けます。

  • 評価料でカバーする賃上げ:対象職員(40歳未満薬剤師+事務職員)の基本給等の引上げ
  • 会社負担でカバーする賃上げ:管理薬剤師・40歳以上薬剤師など対象外職員の処遇改善

この「二本立て」を先に設計しておかないと、制度が始まってから揉めます。ただし、ここで注意したいのが次の論点です。


評価料の使途ルール——「余ったら返還」のリスクをどう読むか

告示の文面で押さえたい部分があります。

評価料で得た収入は、対象職員の基本給または決まって毎月支払われる手当(基本給等)の引上げと、それに伴う賞与・時間外手当・法定福利費等の増加分に充てること——これが原則です。

つまり、「対象外の職員の賃上げに流用する」のはルール違反になります。

さらに気になるのが、ベースアップを実施した上で処方箋受付回数の変動等により評価料収入がベア等に用いた額を上回った場合の扱いです。告示では、追加でベア等を行うことが困難な場合に限り、賞与等の手当など別の方法で賃金改善することが認められるとされています。

ここで現場が気にしているのは「それでも余ったらどうなるのか」という点です。情報としては、翌年への持ち越しが可能という方向で整理されているようですが、最終的に使い切れなかった場合の返還リスクもゼロではないと見ておいたほうが安全です。

え、返還って……。算定したのにお金を返すことがあるんですか?

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

可能性としてはあります。ただ、「賃上げに使う目的の財源」なので、きちんと賃金改善に充てていれば問題にはなりにくいです。リスクが高いのは、対象者が極端に少なくて評価料収入が大幅に余るケースですね。そういう薬局は、算定するかどうかの判断自体を慎重にしたほうがいいかもしれません。

誤解されやすいので先に言うと、「算定=義務」ではありません。届出して算定するかどうかは各薬局の判断です。ただし、算定しないと賃上げ原資が入ってこないので、多くの薬局は算定する方向に動くはずです。

私なら、次のフローで判断します。

  1. 対象職員の人数と給与総額を出す
  2. 賃上げ率(薬剤師3.2%、事務5.7%)を掛けて必要コストを出す
  3. 処方箋枚数×点数で評価料収入を出す
  4. 収入とコストを比較する
  5. 収入>コストになる場合:余剰分の使途(追加の賃金改善)を先に計画しておく
  6. 収入<コストになる場合:Ⅱ(追加区分)の算定を検討する

特に5番、余剰が出るケースの準備が抜けがちです。いまの状況だと、対象者が少ない薬局ほどこのパターンにはまりやすいです。


事務負担と届出——「年2回の報告」が地味に重い

告示を読んで、もうひとつ見えてきたのが事務負担の実態です。

届出・報告に必要な書類を整理すると、こうなります。

タイミング書類様式
算定開始時施設基準の届出様式103
毎年8月賃金改善実績報告書(前年度分)様式104の別添1又は2
毎年8月賃金改善中間報告書(当年度分)様式104の別添1又は2
必要時特別事情届出書(賃金水準を引き下げる場合)様式94

現場だとここで詰まりがちです。毎年8月に「実績報告」と「中間報告」の2本を出す必要があります。しかも、算定に係る書類は年度終了後3年間の保管義務つきです。

8月って薬局も忙しい時期じゃないですか。レセプト業務もあるのに、報告書を2本……。

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

だからこそ、日頃から「対象職員の給与データ」を月次で整理しておくのが効きます。8月にゼロから作るのではなく、毎月の給与計算時にデータを更新しておけば、報告書作成の負荷はかなり減ります。法人内に複数店舗がある場合は、様式104の別添2で通算届出ができるので、その選択肢も検討してください。

ここで一つ補足しておきたいのが、法人内の通算届出です。同一法人・同一グループ内で同じ給与体系を使っている複数の薬局がある場合、月額賃金総額と対象職員数を通算して届出できます。店舗ごとにバラバラに出す必要がないので、チェーン薬局にとっては事務負担の軽減になります。

ただし、法人一括で按分する場合は、按分ルールを先に決めておくことが前提です。処方箋枚数比で按分するのか、対象職員の給与総額比で按分するのか。後出しで決めると揉めます。


店舗販売業を併設している薬局は要注意

もう一点、見落としがちな論点があります。ドラッグストア併設型など、店舗販売業を併設している薬局向けのルールです。

評価料で得た収入は「保険調剤に従事する職員の賃上げにのみ」使うこと。店舗販売業に従事する職員の賃上げには使えません。

どうですか? ここ、実務上は線引きが難しいケースがあるはずです。

告示にはその場合の計算方法も示されています。保険調剤に従事する職員と店舗販売業に従事する職員を明確に分けられない場合は、「全職員数 × 保険調剤収入の割合」で対象職員数を算出する、という考え方です。

私ならまず、自薬局の収入構成(保険調剤 vs OTC等)を確認して、対象職員数にどう影響するかを見ます。OTC比率が高い併設店舗ほど、この按分で対象職員数が減り、使える原資と必要コストのバランスが変わってきます。


「3.9点で足りるか」再検証——対象者が絞られた前提で

ここまでの内容を踏まえて、以前お見せした試算(月1200枚・薬剤師2人+事務1人)を再検証してみます。

前提の変更点

  • 薬剤師2人のうち、1人が管理薬剤師 → 対象外
  • 残り1人が40歳未満 → 対象
  • 事務1人(年齢問わず) → 対象

つまり、対象者は薬剤師1人+事務1人の計2人に減ります。

評価料収入(変わらず)

1,200枚 × 3.9点 × 10円 = 46,800円/月

賃上げコスト(パターン①:求人賃金ベース)

職種月給賃上げ率人数月額増
薬剤師(40歳未満)35.6万円3.2%1人11,392円
事務19.5万円5.7%1人11,115円
合計(給与増)22,507円
法定福利費込み(×1.15)約25,883円

評価料収入との差

46,800円 − 25,883円 = +20,917円(約2.1万円の余剰)

逆に言うと、対象者が減ったことで、評価料収入が余りやすくなる構造です。

足りないよりはいいけど……余った分はどうするんですか? さっきの返還の話が気になります。

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

余剰分は、対象職員への追加の賃金改善(賞与上乗せなど)に充てるのが基本です。それでも余る場合の扱いは、運用通知や疑義解釈で明確になるはずなので、そこは確定情報を待ちましょう。ただ、「余るから算定しない」は本末転倒です。対象者の賃上げ原資を確保するのが制度の目的ですから。

ここで押さえたいのは、管理薬剤師や40歳以上の薬剤師の処遇をどうするか、という経営判断は別途必要だということです。評価料はあくまで対象者向けの原資。対象外の職員への賃上げは、会社の持ち出しになります。


管理薬剤師・40歳以上の薬剤師はどうなる?——制度の外側で考えること

しないほうが安全なのは、「制度で全員カバーされる」と思い込むことです。

管理薬剤師と40歳以上の薬剤師は、少なくとも調剤ベースアップ評価料の枠組みでは賃上げの対象になりません。これは制度上の事実です。

では、この層の処遇改善はどうするか。いくつかの方向性を整理します。

会社の持ち出しで賃上げする場合

  • メリット:職場内の公平感を保てる
  • デメリット:原資は薬局の利益から出す必要がある

現実:大手チェーンは対応しやすいが、中小薬局は厳しい場合がある

対象外職員の賃上げを見送る場合

  • メリット:財務的にはシンプル
  • デメリット:モチベーションや離職リスクに影響する可能性

現実:「なぜ自分だけ上がらないのか」という声は必ず出る

制度改正を待つ場合

  • 次回改定で対象範囲が拡大される可能性はゼロではない
  • ただし、それまでの2年間は現行ルールで運用する必要がある

どのパターンを選ぶにしても、「対象職員にはこういう制度で賃上げする」「対象外の職員にはこういう方針で対応する」という説明を、職員に対してきちんと行うことが告示でも求められています。対象職員から照会があった場合は書面で説明する義務もあります。


私ならこう準備する——告示を踏まえたチェックリスト

最後に、告示の内容を踏まえて「今やっておくこと」を整理します。

今すぐやること

  • 職員リストを作成し、対象者/対象外を仕分ける(管理薬剤師・40歳以上・業務委託を除外)
  • 対象職員の月額賃金(基本給+毎月の手当)を確認する
  • 処方箋枚数の直近12か月平均を出す
  • 3.9点前後で仮試算し、収入とコストのバランスを確認する
  • 余剰が出る場合の賃金改善方針を仮決めする

届出前に決めておくこと

  • 対象外職員(管理薬剤師・40歳以上)への対応方針
  • 法人内に複数店舗がある場合の按分ルール
  • 店舗販売業併設の場合、保険調剤収入割合の算出
  • 月次の給与データ管理フロー(8月の報告に備えて)

やらないほうが安全なこと

  • 点数・運用が確定していない段階で、賃金改善の具体額を職員に約束してしまうこと
  • 対象外職員への処遇改善を「あとで考える」と先送りすること(不満が蓄積する前に方針だけは示す)

まとめ:制度の「枠」と「外側」の両方を見ないと判断を間違える

調剤ベースアップ評価料の告示を読んで、率直に感じたのは「対象者の絞り込みが想像以上に厳しい」ということです。

管理薬剤師は管理者として対象外。40歳以上の薬剤師も対象外。この2つだけで、小規模薬局では対象者が1〜2人しかいない、というケースが現実的に起こり得ます。

3.9点で足りるかどうかは、以前の試算でお見せした通り「給与水準と対象者で簡単にひっくり返る」話でした。それに加えて、対象者が少ない薬局では「評価料が余る」リスクも出てきます。足りないのも困るけれど、余るのもまた、使途の縛りがある以上は悩ましい。

そして、制度の外側——管理薬剤師や40歳以上の薬剤師の処遇をどうするか——は、各薬局・法人の経営判断に委ねられます。ここを放置すると、職場内の公平感が崩れ、結果的に離職リスクにつながりかねません。

私なら、確定版が出た瞬間に動けるよう、今は「対象者の棚卸し」と「仮試算」と「対象外職員への方針案」の3つだけ準備しておきます。

確定情報は、中医協資料・厚労省の告示通知・地方厚生(支)局の届出様式で必ず確認してください。疑義解釈や事務連絡で運用の詳細が追加される可能性もあるので、そちらも継続的にウォッチするのをおすすめします。

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