2025年1月の中医協総会で、ある方針が示されました。「緊急性のない時間外調剤」を選定療養の対象とするというものです。
正直なところ、「え、薬局でも選定療養費を取ることになるの?」と戸惑った方も多いのではないでしょうか。私もまず確認したのは、これがどういう仕組みで、現場にどんな影響があるのかという点でした。
これまで薬局では夜間休日等加算や時間外加算を算定してきましたが、そこに「緊急性の有無」という判断が加わることになります。医科ではすでに運用されている制度ですが、薬局での具体的な判断基準はまだ明確に示されていません。
この記事では、厚生労働省の資料や医科での運用実態をもとに、薬局での準備ポイントを整理していきます。
目次
時間外選定療養とは?薬局に何が起きるのか

制度の概要と背景
2025年1月の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、選定療養の対象範囲を見直す方針が示されました。具体的には、「緊急性のない保険薬局が表示する開店時間以外の時間における調剤」を選定療養に追加するというものです。
でも、今までも夜間休日加算とか時間外加算ってありましたよね?何が変わるんですか?

オカメインコ

ポッポ先生
いい質問ですね。従来の加算は「薬局側の対応」への評価でした。今回の変更は「患者都合で時間外に来局した場合、その負担を患者さんに求める」という仕組みの追加です。緊急性がある場合は従来通り加算で対応し、緊急性がなければ選定療養費という形になります。
ここ、誤解されやすいので先に言うと、緊急やむを得ない事情がある場合は、選定療養費を徴収してはいけないというルールも同時に設けられます。つまり「全員から取る」わけではありません。
医科ではどうなっているか
医科ではすでに「時間外選定療養費」として運用されています。金額は医療機関によって異なりますが、5,500円〜11,000円(税込)という設定が多いようです。
| 医療機関例 | 時間外選定療養費(税込) |
|---|---|
| 東京臨海病院 | 5,500円 |
| 東京女子医科大学附属足立医療センター | 7,700円 |
| 埼玉医科大学病院 | 8,800円 |
| 兵庫医科大学病院 | 8,800円 |
| 日本赤十字社医療センター | 11,000円 |
いまの状況だと、薬局での金額設定はまだ示されていません。医科を参考にすると数千円規模になる可能性がありますが、これは今後の通知や疑義解釈を待つ必要があります。
従来の時間外加算との違いを整理する

開局時間「内」と「外」で変わる加算の種類
現場だとここで詰まりがちです。まず、現行の加算体系を整理しておきます。
開局時間内の場合:夜間・休日等加算(40点)
- 平日19時〜翌8時(土曜は13時〜翌8時)
- 休日(日祝日、12/29〜1/3)の開局時間内
- 開局時間として掲示している時間帯が対象
開局時間外の場合:時間外等加算
- 時間外加算:基礎額の100%(概ね8時前・18時以降、深夜・休日除く)
- 休日加算:基礎額の140%
- 深夜加算:基礎額の200%(22時〜翌6時)
正直、時間外加算と夜間休日等加算の違いもよくわからないんですが…

オカメインコ

ポッポ先生
シンプルに言うと、「開局時間内か外か」がポイントです。開局時間内の夜間帯なら夜間・休日等加算、開局時間外に急遽対応した場合は時間外等加算。どちらも算定できる状況なら、時間外等加算を優先します。
選定療養が加わるとどうなるか
新しい制度では、時間外等加算の対象となる場面に「緊急性」の判断が加わります。
- 緊急性あり → 従来通り時間外等加算を算定
- 緊急性なし → 選定療養費として患者負担を求める
逆に言うと、開局時間内の夜間・休日等加算には影響がない見込みです。ただし、この点も通知が出るまでは確定ではないので、続報に注意が必要です。
「緊急性」をどう判断するか——医科の事例から学ぶ

医科での除外基準
ここ、迷いやすいところです。薬局での具体的な基準は未発表ですが、医科での「選定療養費を徴収しない場合」が参考になります。
医科で時間外選定療養費の対象外となるケース(主な例)
- 救急外来受診のための紹介状を持参している場合
- 受診後、そのまま入院となった場合
- 当該医療機関で治療中の疾患が急変した場合
- 医師から時間外受診を指示されていた場合
- 医師の診察の結果、緊急性があると判断された場合
- 生活保護法による医療扶助の対象である場合
- 小児(中学生まで)の場合(医療機関による)
薬局に置き換えて考える
では、薬局ではどう判断すればいいでしょうか。私なら以下のような観点で整理します。
「緊急性あり」と判断できそうなケース
- 処方元の医療機関が時間外診療を行い、その処方箋を持参した場合
- 処方箋に「至急」「緊急」等の記載がある場合
- 容態の急変により医師から時間外の服薬指示があった場合
- 在宅患者の急変対応
「緊急性なし」と判断されそうなケース
- 仕事の都合で開局時間内に来られなかった
- うっかり処方箋の期限が迫っていた
- 開局時間を知らずに来局した
ただし、これはあくまで現時点での推測です。疑義解釈や通知が出るまでは、断言しないほうが安全です。
でも、「仕事で来られなかった」って言われたら、緊急じゃないと言いにくくないですか?

オカメインコ

ポッポ先生
その気持ちはよくわかります。ただ、医科では「患者都合による時間外受診」を選定療養の対象としています。判断に迷う場合のルールを薬局内で決めておくことが大切ですね。
運用準備として今から押さえておくべきこと

ステップ1:開局時間の明確な掲示
時間外加算や選定療養費の前提として、開局時間の掲示が必須となります。
- 薬局の内側と外側の両方に掲示
- 曜日ごとの開局時間を明記
- 夜間・休日等加算の対象時間帯も併記
どうですか?いまの掲示、外からもはっきり見えていますか?
ステップ2:判断基準と対応フローの作成
正式な基準が示されるまでの暫定版でも、薬局内で以下を決めておくと混乱を減らせます。
- 緊急性の有無を誰が、どのタイミングで判断するか
- 判断に迷った場合の対応ルール
- 記録の残し方(薬歴への記載項目)
ステップ3:患者説明の準備
選定療養費を徴収する場合、事前に内容・料金を説明し、同意を得る必要があります。
これは長期収載品の選定療養でも経験したことですが、患者さんへの説明が最も神経を使う部分です。「なぜ追加でお金がかかるのか」を理解していただけないと、トラブルになりかねません。
説明用のテンプレートとか、準備しておいたほうがいいですか?

オカメインコ

ポッポ先生
はい、あったほうがいいですね。特に「緊急性がある場合は対象外です」という点を伝えないと、不公平感を持たれやすいです。
ステップ4:レセコン・会計システムの確認
選定療養費は保険外負担となるため、通常の調剤報酬とは別に請求・会計する必要があります。システム対応が必要になる可能性があるので、早めにベンダーへ確認しておくと安心です。
よくある疑問と注意点
Q:すべての薬局が対象になるのか?
現時点の情報では、「保険薬局が表示する開店時間以外の時間における調剤」が対象とされており、薬局の規模や種類による限定はありません。ただし、救急医療対策の一環として輪番制で対応している薬局などは、別の扱いになる可能性があります。
Q:選定療養費の金額は自由に決められる?
医科では医療機関ごとに金額を設定しています。薬局でも同様になるか、一定の基準が示されるかは不明です。いずれにしても「社会的に見て妥当適切」な金額であることが求められます。
Q:時間外対応を減らしたほうがいい?
ここ、心当たりありませんか——「面倒だから時間外対応をやめよう」という発想です。
地域の医療提供体制を考えると、時間外対応を一切なくすというのは現実的ではない薬局も多いはずです。選定療養費の仕組みは、「時間外対応をやめさせる」ためではなく、「緊急性のない利用を減らす」ためのものです。
まとめ|今から始める準備と確認すべき一次情報

2026年度から、薬局でも時間外選定療養制度がスタートする見込みです。
押さえておきたいポイント
- 「緊急性のない時間外調剤」が選定療養の対象になる
- 緊急やむを得ない場合は対象外(従来の加算で対応)
- 医科では5,500〜11,000円程度の選定療養費を徴収
- 薬局での具体的な運用基準は今後の通知・疑義解釈を待つ必要あり
次の一歩として
- 開局時間の掲示を見直す
- 薬局内で緊急性判断の暫定ルールを話し合う
- 患者説明用の資料を準備しておく
- レセコン・会計システムの対応状況を確認する
最新情報は厚生労働省の中医協資料や、各都道府県薬剤師会からの情報発信を確認してください。
確認先(一次情報)
- 厚生労働省「中央社会保険医療協議会」資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html
制度の詳細が固まり次第、運用フローを更新していくことが大切です。いまは「完璧な準備」よりも「情報収集と暫定対応の整理」を優先しましょう。


