2026年1月23日に発表された個別改定項目(通称「短冊」)で、かかりつけ薬剤師指導料(76点)と包括管理料(291点)の廃止が示されました。SNS上では「今までの苦労は…」「認定薬剤師の研修費用はどうなる?」といった動揺が広がっています。
ただ、ここで一度立ち止まって整理したいのが、「廃止」が何を意味するかです。結論から言うと、かかりつけ薬剤師という制度そのものが消えるわけではありません。評価の仕組みが「契約の有無」から「具体的な行為・実績」へと再編されます。
この記事では、短冊の原文と中医協での議論経緯をもとに、何がどう変わるのか、現場で何を準備すべきかを整理します。私自身、改定のたびに「で、結局どうすればいいの?」と迷うタイプなので、同じ気持ちの方に向けて書きました。
目次
なぜ「廃止」なのか?──制度が機能しなかった10年の背景

まず押さえたいのは、今回の見直しが「小手先の修正」ではなく「抜本的な再編」である点です。
2015年の「患者のための薬局ビジョン」から約10年。かかりつけ薬剤師指導料の算定割合は、処方箋受付回数のわずか1.4%にとどまっています(令和6年時点、中医協資料より)。普及が進まなかった背景には、構造的な問題がありました。
中医協で指摘された主な課題
| 課題 | 具体的な内容 |
|---|---|
| ノルマ化 | 薬局経営側が同意獲得数を「ノルマ」として課す実態(業務ノルマがある薬局の約半数で設定) |
| 患者の不満 | 「行くたびに同意を求められる」「初対面で軽く頼まれた」等の苦情 |
| ミスマッチ | いつも相談しているAさんは要件を満たさず、話しにくいBさんを勧められる |
| タダ働き | 関係性を考慮して算定を控える薬剤師の存在 |
でも、うちの薬局もノルマあります…。それって現場のせいじゃないですよね?

オカメインコ

ポッポ先生
そうですね。制度設計自体が「同意書ありき」になっていたことが問題視されました。だから今回、評価軸ごと変えるという判断になったんです。
ここ、心当たりありませんか? 私も「同意もらってきて」と言われるたび、患者さんとの関係性より数字を求められている感覚がありました。中医協の支払側委員も「同意書の取得をノルマ化することは本来の姿ではない」と明言しています。
何が変わる?──服薬管理指導料への統合と新加算の創設

では、具体的にどう変わるのか。短冊の原文をもとに整理します。
変更点①:かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料は「削除」
従来の「かかりつけ薬剤師指導料(76点)」「包括管理料(291点)」という独立した点数区分は廃止されます。
変更点②:服薬管理指導料に統合
かかりつけ薬剤師としての機能は、服薬管理指導料の「注1のイ」として評価される形になります。
算定要件
手帳を提示した患者に対し、同意を得た特定の薬剤師(かかりつけ薬剤師)が指導を行うこと
誤解されやすいので先に言うと、「かかりつけ薬剤師」という役割自体は残ります。ただ、それだけで毎回加点される仕組みではなくなる、ということです。
変更点③:行為ベースの新加算が創設
ここが今回の改定の肝です。「契約している状態」ではなく「手間のかかる業務を実施した実績」に対して加算が付きます。
| 加算名 | 頻度 | 内容 |
|---|---|---|
| かかりつけ薬剤師フォローアップ加算 | 3月に1回 | 来局間に電話等で服薬状況・残薬状況の継続確認・指導を実施した場合 |
| かかりつけ薬剤師訪問加算 | 6月に1回 | 患者・家族の求めに応じて患家を訪問し、残薬整理・管理指導を行い、医療機関に情報提供した場合 |
フォローアップって、今でもやってる人いますよね? それが点数になるってこと?

オカメインコ

ポッポ先生
そうです。ただし条件があって、外来服薬支援料や残薬調整の実績がある患者さんに対し、「患者の求めに応じて」実施することが要件です。こちらから一方的に電話するだけでは算定できない点に注意ですね。
私ならまず、既存の患者さんのうち「外来服薬支援料」や「残薬調整」を算定した方のリストを確認します。そこがフォローアップ加算の対象候補になるからです。
施設基準はどう変わる?──在籍要件の緩和と新たな条件
かかりつけ薬剤師を担当できる薬剤師の要件も見直されます。現場だとここで詰まりがちなので、変更点を整理します。
主な施設基準(薬剤師個人の要件)
| 項目 | 現行 | 改定案 |
|---|---|---|
| 保険薬局勤務経験 | 3年以上 | 3年以上(変更なし) |
| 週の勤務時間 | 32時間以上 | 31時間以上(育児・介護特例は24時間以上かつ週4日以上) |
| 当該薬局への在籍期間 | 1年以上 | 6か月以上(産休・育休・介休からの復職は休業前期間を合算可) |
| 認定薬剤師 | 必要 | 必要(変更なし) |
| 地域活動への参画 | 必要 | 必要(変更なし) |
薬局の体制要件(新設)
これまでなかった「薬局としての体制要件」が追加されます。
- 常勤薬剤師の平均在籍期間が1年以上、または管理薬剤師が3年以上継続在籍
- プライバシー配慮(パーテーション等で区切られた独立カウンター)
うちの薬局、人の入れ替わり激しいんですけど…

オカメインコ

ポッポ先生
その場合は「管理薬剤師が3年以上在籍」の要件で満たせる可能性があります。どちらか一方を満たせばよい設計になっているので、自薬局がどちらに該当するか確認してみてください。
ただし、在籍要件が6か月に緩和されたとはいえ、認定薬剤師の取得や地域活動への参画は引き続き求められます。「要件が緩くなったからすぐ届出できる」とは限らない点、注意が必要です。
SNSの反応から見る現場の本音──不安と再定義のチャンス

短冊発表直後、SNS上では様々な反応がありました。ここ、どうですか? 似たような気持ちになっていませんか。
多かった声①:驚きと失望
「今までの苦労は…」「3月にかかりつけ周知イベントしようと思ってたのに廃止は草」
同意獲得に苦労してきた方ほど、徒労感を覚えるのは当然です。ただ、逆に言うと、ノルマ的な同意取得から解放される側面もあります。
多かった声②:業界への影響懸念
「調剤薬局潰す気マンマン」「弱い薬局は滅び、激混み巨大薬局誕生→その薬局も消滅」
経営面への不安は根深いものがあります。ただ、この点については今回の改定だけでなく、薬価改定や医薬品供給不足など複合的な要因が絡むため、かかりつけ制度の見直し単体で判断しないほうが安全です。
少数だった声③:再定義のチャンス
「患者さん中心の服薬支援をさらに強化できると嬉しいです」
私自身は、この見方に近いスタンスを取っています。「同意書を書いてもらう」から「実際にフォローアップや訪問を行う」への転換は、本来の薬剤師機能に近づく方向だと考えるからです。
正直、認定薬剤師の研修費用、自腹で払ってるんですけど…。これからも意味あるんですか?

オカメインコ

ポッポ先生
認定薬剤師は施設基準の要件として残っています。むしろフォローアップ加算や訪問加算を算定するためには、かかりつけ薬剤師として届け出る必要があるので、今後も活きる資格です。ただし、薬局側が研修費用を負担してくれるかは別問題なので、そこは確認したいところですね。
今から準備できること──判断軸と具体的なアクション

最後に、改定施行(2026年6月予定)までに現場で準備できることを整理します。
チェックリスト:自分・自薬局の状況確認
- 自分は施設基準(勤務経験3年以上、在籍6か月以上、認定薬剤師、地域活動)を満たしているか
- 薬局は体制要件(常勤薬剤師の平均在籍1年以上 or 管理薬剤師3年以上、プライバシー配慮)を満たしているか
- 外来服薬支援料・残薬調整を算定した患者リストを把握しているか(フォローアップ加算の対象候補)
- 訪問対応のオペレーション(交通費負担の説明、情報提供書の作成フロー等)は整備されているか
判断軸:何を優先するか
いまの状況だと、「とりあえず様子見」になりやすいです。ただ、改定施行後に慌てないためには、以下の順で確認しておくと安心です。
- 施設基準の確認:自分が要件を満たすか、薬局が届出できるか
- 対象患者の洗い出し:フォローアップ・訪問加算の対象になりうる患者さん
- オペレーションの整備:電話フォローの記録方法、訪問時の手順書

ポッポ先生
点数がまだ●●点と未確定の部分もあります。告示・通知が出たら、具体的な点数と算定要件を再確認してください。一次情報は厚労省の告示・通知、または地方厚生局への届出様式で確認できます。
まとめ|「廃止」は終わりではなく、評価軸の転換

今回の改定のポイントを整理します。
- かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料は廃止されるが、制度自体は服薬管理指導料に統合される形で存続
- 「契約の有無」から「行為・実績」への評価転換が今回の改定の核心
- 新加算(フォローアップ加算・訪問加算)で、電話フォローや患家訪問が点数化される
- 施設基準は一部緩和(在籍要件6か月、週31時間)されるが、認定薬剤師や地域活動要件は維持
次の一歩として、まずは自分と自薬局の施設基準充足状況を確認することをお勧めします。そのうえで、フォローアップ・訪問の対象になりうる患者さんのリストを把握しておくと、施行後にスムーズに動けます。
不確実な点(具体的な点数、届出様式の詳細等)は、告示・通知の公表後に厚労省サイトまたは地方厚生局で確認してください。
確認先(一次情報)
- 厚生労働省:中央社会保険医療協議会(中医協)総会資料
- 地方厚生局:施設基準届出様式


