「SOAPのAって何を書けばいいの?」「アセスメントがぼやけている気がする…」そんな悩みを抱える薬剤師さんは決して少なくありません。
本記事では、アセスメントの書き方を基礎から実践まで丁寧に解説します。具体的な文例も豊富に紹介するので、明日からすぐに使える知識が身につきますよ。
目次
なぜアセスメントが書けないのか?根本的な原因を理解しよう
アセスメントの本質を見失っていませんか?
多くの薬剤師がアセスメントに悩む理由は、その本質を理解していないことにあります。アセスメントとは「どのように着目したのか、(その着目点を)どのように考えたのか」を表現することなのです。

ポッポ先生
アセスメントは単なる「評価」ではありません。患者さんのSとOの情報から、薬剤師として何を感じ、どう判断したかを言語化することが重要ですね。
つまり、自分の考えた過程を文章にすればいいってことですね!でも、具体的にはどう書けばいいんですか?

オカメインコ
よくある間違いパターン
❌ 悪い例:「服薬の継続が必要」「様子を見る」 ❌ 悪い例:「コンプライアンス良好」「副作用なし」
これらは評価や結論であって、アセスメント(分析・判断過程)ではありません。
SOAP薬歴アセスメントの黄金ルール
ルール1:アセスメントの根拠はO情報にある
アセスメントの根拠となる事実、いわばその証拠がO情報です。Oで得た客観的情報をもとに、薬剤師としてどう判断したかをAに記載します。
ルール2:プロブレム1つにSOAP1つが大原則
プロブレム1つにSOAP1つが大原則です。複数の問題が混在すると、アセスメントも曖昧になってしまいます。

ポッポ先生
この2つのルールを意識するだけで、アセスメントは格段に書きやすくなりますよ。次からは具体的な書き方を見ていきましょう!
実践!アセスメントの書き方パターン別解説
パターン1:服薬状況の問題
プロブレム:飲み忘れが多い患者
S:「忙しくて朝の薬を飲み忘れることが多い」 O:残薬7日分あり。朝の降圧薬のみ余っている。
✅ 良いアセスメント例: 「朝の服薬タイミングでの飲み忘れが頻回にあり、降圧効果が不安定になる可能性がある。患者は飲み忘れの自覚があるため、服薬タイミングの見直しで改善が期待できる。」
なるほど!ただ「飲み忘れあり」じゃなくて、なぜ問題なのか、どう解決できそうかまで書くんですね。

オカメインコ
パターン2:副作用の疑い
プロブレム:薬剤性と思われる症状の出現
S:「最近、便秘がひどくて困っている」 O:Ca拮抗薬開始後2週間。便秘の既往なし。
✅ 良いアセスメント例: 「Ca拮抗薬開始後の便秘症状であり、薬剤性便秘の可能性が高い。患者に便秘の既往がないことから、薬剤との関連性が強く疑われる。症状が継続する場合は対策が必要。」
パターン3:患者理解度の評価
プロブレム:服薬指導の理解度確認
S:「この薬、血圧を下げるんですよね?調子がいい時は飲まなくてもいいですか?」 O:前回も同様の質問あり。血圧手帳への記録なし。
✅ 良いアセスメント例: 「降圧薬の継続服用の必要性について理解が不十分。前回指導後も同様の発言があることから、継続的な教育が必要。血圧測定の習慣化も含めた包括的なアプローチが効果的と考えられる。」
疾患別アセスメント文例集
高血圧
血圧コントロール良好な場合 「家庭血圧が目標値内で推移しており、現在の治療が奏功している。患者の服薬アドヒアランスも良好で、生活習慣への意識も高い。」
血圧が高値の場合 「家庭血圧が150-160台と目標値を上回っており、心血管リスクが懸念される。服薬状況に問題はないため、処方調整の検討が必要と思われる。」
糖尿病
血糖コントロール悪化時 「HbA1cが前回より上昇しており、血糖コントロールの悪化が認められる。患者から食事量増加の訴えがあり、食事療法の見直しが急務。薬物療法の強化も検討が必要。」
低血糖の懸念 「高齢で腎機能低下があるため、現在の糖尿病薬投与量では低血糖リスクが高い。ふらつきの訴えもあり、血糖測定の頻度を増やし注意深いモニタリングが必要。」
認知症
服薬管理能力の評価 「認知機能の低下により、独居での服薬管理が困難になってきている。薬包の状態や残薬状況から、服薬タイミングの混乱が疑われる。家族または介護者による服薬支援体制の構築が必要。」

ポッポ先生
疾患ごとに注目すべきポイントは変わりますが、基本的な構造は同じです。「現状の把握→リスクの評価→今後の方針」という流れを意識しましょう。
レベル別アセスメント向上法
初心者レベル:まずは型を覚える
基本の型:「〜の状況から、〜のリスク/可能性がある。〜のため、〜が必要/効果的と考えられる。」
例:「服薬アドヒアランスが低下している状況から、治療効果の減弱が懸念される。患者に服薬の重要性への理解があるため、服薬リマインダーの活用が効果的と考えられる。」
中級者レベル:判断根拠を明確に
- 薬学的知識を踏まえた分析
- 患者背景を考慮した個別化
- 複数の選択肢からの判断理由
例:「高齢で腎機能低下(eGFR 45)があるため、メトホルミンの減量または中止を検討すべき。乳酸アシドーシスのリスクを考慮すると、DPP-4阻害薬への変更が安全性の観点から適切と判断される。」
上級者レベル:包括的な視点
- 長期的な予後予測
- 多職種連携の必要性
- QOLへの影響評価
例:「認知機能低下と独居環境を考慮すると、複雑な服薬スケジュールは継続困難と予想される。かかりつけ医と連携し、処方簡略化を検討するとともに、地域包括支援センターとの連携による見守り体制の構築が患者の安全確保に不可欠。」
よくある質問とその解決法
Q1:アセスメントが思い浮かばない時は?
A1:逆算して考える まず「この患者さんに何をしてあげたいか(P)」を考え、そこから逆算して「なぜそれが必要なのか(A)」を考えてみましょう。
Q2:毎回同じようなアセスメントになってしまう
A2:着眼点を変える
- 今回初めて気づいた点はないか
- 前回からの変化はないか
- 患者さんの発言の背景にある気持ちは何か
なるほど!ただ薬のことだけじゃなくて、患者さんの生活や気持ちも考えるんですね。

オカメインコ
Q3:長文になりすぎてしまう
A3:要点を絞る 一つのSOAPでは一つのプロブレムに集中。複数の問題がある場合は、SOAPを分けて記載しましょう。
個別指導での指摘を避けるポイント
記載必須項目をチェック
近畿厚生局が提示する「記載しておくべき項目」を意識して、以下の点は必ず含めましょう:
- 服薬状況の評価
- 副作用発現の有無とその判断
- 体調変化への対応
- 残薬状況とその原因分析
- 患者教育の効果
第三者が読んでも分かる記載
他の薬剤師が読んでも理解できる内容になっているか、常に意識して記載しましょう。

ポッポ先生
個別指導では「判断根拠が不明確」「記載内容が不十分」といった指摘を受けることが多いです。アセスメントで「なぜそう判断したか」を明確にすることで、多くの指摘を避けることができますね。
まとめ:アセスメントマスターへの道
SOAP薬歴のアセスメントは、薬剤師としての思考過程を表現する重要な部分です。「アセスメントの根拠がO情報」「プロブレム1つにSOAP1つが大原則」という2つのポイントを押さえることで、格段に書きやすくなります。
今日から実践できること:
- まずはO情報から何が言えるかを考える
- 一つのプロブレムに集中してSOAPを書く
- 「なぜそう判断したか」を言語化する
- 患者さんの背景を踏まえた個別化された視点を持つ
毎日の薬歴記載の中で、これらのポイントを意識して練習を重ねることで、必ずアセスメント力は向上します。患者さんにとってより良い薬物療法の提供につながる、質の高い薬歴を目指していきましょう。
具体例がたくさんあって、とても分かりやすかったです!明日から実践してみます!

オカメインコ

ポッポ先生
アセスメントは薬剤師の専門性を最も表現できる部分です。患者さんのために、そして自分自身のスキルアップのためにも、ぜひ継続して取り組んでくださいね。