目次
麻薬管理指導加算とは?基本情報と点数
麻薬管理指導加算は、麻薬が処方された患者やその家族に対して、服用および保管の状況、副作用の有無などについて確認し、必要な薬学的管理や指導を行った場合に算定できる加算です。在宅医療の推進に伴い、麻薬の調剤機会も増加傾向にあるため、薬剤師による麻薬の適正使用に係る管理の重要性はますます高まっています。

ポッポ先生
麻薬管理指導加算は単なる点数算定のためのものではなく、患者さんの疼痛コントロールを適切に行い、QOL向上をサポートするための重要な薬学的管理です!
算定点数
麻薬管理指導加算の点数は、外来と在宅で異なります。
区分 | 点数 |
---|---|
外来(服薬管理指導料、かかりつけ薬剤師指導料) | 22点 |
在宅(在宅患者訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急時等共同指導料) | 100点 |
在宅オンライン(在宅患者オンライン薬剤管理指導料、在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料) | 22点 |
なぜ在宅とオンラインで点数が違うんですか?

オカメインコ

ポッポ先生
在宅訪問では、患者さんの自宅で直接麻薬の保管状況や使用状況を確認し、より詳細な管理・指導を行うことが評価されています。オンラインの場合は対面の外来と同等の22点になっているのです。
2024年度改定のポイント
2024年度(令和6年度)の診療報酬改定では、麻薬管理指導加算の算定要件が一部見直されました。主な変更点は以下の通りです。
主な変更点
- フォロー体制の明確化
- 電話による確認方法について、電話以外の情報通信機器(メール等)を用いた方法も含まれることが明記されました。
- ただし、一斉メール等の一方的な情報発信のみでは継続的服薬指導を実施したことにはならないため注意が必要です。
- ガイドラインの参照
- 麻薬による鎮痛効果や体調変化の確認にあたり、緩和ケアに関するガイドラインを参照して実施することが明記されました。

ポッポ先生
麻薬の効果評価や副作用モニタリングを行う際には、最新のガイドラインを参考にすることで、より質の高い薬学的管理が可能になります。特に疼痛評価のスケールなど、具体的な評価方法を知っておくと良いでしょう!
参考ガイドライン
麻薬による鎮痛効果や副作用の発現、体調変化などの確認については、以下のガイドラインを参考にします。
- 「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」(日本緩和医療学会)
- 「新版 がん緩和ケアガイドブック」(日本医師会監修 厚生労働科学特別研究事業「適切な緩和ケア提供のための緩和ケアガイドブックの改訂に関する研究」班)


外来患者に対する麻薬管理指導加算の算定要件
基本的な算定要件
外来患者に対する麻薬管理指導加算(22点)を算定するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 対象患者:麻薬が処方された患者
- 算定回数:処方箋受付1回につき1回算定可能
- 基本管理料:以下のいずれかを算定していること
- 服薬管理指導料
- かかりつけ薬剤師指導料
電話での確認は必ず必要なんですか?どのくらいの頻度で行えばいいんでしょう?

オカメインコ

ポッポ先生
外来の麻薬管理指導加算では、調剤後の継続的な電話等による確認が必須です。頻度については明確な規定はありませんが、関東信越厚生局の集団指導資料では「1週間に1回程度」とされています。患者さんの状態に応じて適切な頻度を設定しましょう!
具体的な確認・指導内容
電話等による確認・指導では、以下の項目を実施します。
- 服用状況の確認
- 処方通りに服用できているか
- 頓服薬の使用頻度
- レスキュー薬の使用状況
- 残薬・保管状況の確認
- 残薬の量
- 適切に保管されているか
- 残薬の適切な取扱方法の指導
- 効果と副作用の確認
- 鎮痛効果(数値スケール等を用いた評価)
- 体調変化や副作用の有無(便秘、眠気、吐き気など)
- 必要に応じた対応策の指導
- 情報提供
- 必要に応じて処方医へ情報提供を行う
薬歴への記載事項
麻薬管理指導加算を算定するためには、薬剤服用歴等に以下の事項を記載する必要があります。
- 確認内容
- 麻薬の服用状況
- 残薬の状況
- 保管状況
- 麻薬による鎮痛等の効果
- 副作用の有無
- 指導内容
- 服薬指導の要点
- 保管取扱い上の注意点
- 残薬の適切な取扱方法の指導内容

ポッポ先生
薬歴への記載は算定要件の一つです。特に鎮痛効果や副作用の評価については、具体的にどのような症状があったか、どの程度の疼痛があったかなど、詳細に記録しましょう!
在宅患者に対する麻薬管理指導加算の算定要件
基本的な算定要件
在宅患者に対する麻薬管理指導加算(100点、オンラインの場合は22点)を算定するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 対象患者:麻薬が処方された在宅患者
- 算定回数:1回につき1回算定可能
- 基本管理料:以下のいずれかを算定していること
- 在宅患者訪問薬剤管理指導料
- 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
- 在宅患者緊急時等共同指導料
- 在宅患者オンライン薬剤管理指導料(この場合は22点)
- 在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料(この場合は22点)
具体的な確認・指導内容
在宅患者に対する麻薬管理指導では、以下の項目を実施します。
- 麻薬に係る薬学的管理指導
- 麻薬の保管管理状況
- 服薬状況
- 残薬の状況
- 麻薬注射剤等の併用薬剤
- 疼痛緩和等の状況
- 麻薬の継続または増量投与による体調変化や副作用の有無
- 患者・家族への指導
- 麻薬に係る服薬指導
- 残薬の適切な取扱方法
- 保管管理に関する指導
- 処方医への情報提供
- 麻薬の服薬状況
- 疼痛緩和の状況
- 体調変化や副作用の有無
- 服薬指導の要点
- 返納された麻薬の管理
- 患者または家族から返納された麻薬の廃棄に関する記録
在宅でも電話フォローは必要なんですか?

オカメインコ

ポッポ先生
在宅の場合は、訪問時に直接確認・指導を行うので、電話フォローは必須ではありません。ただし、訪問と訪問の間に状態変化があった場合など、必要に応じて電話等でのフォローを行うことは良い実践と言えます!
薬歴への記載事項
在宅患者に対する麻薬管理指導加算を算定するためには、薬剤服用歴等に以下の事項を記載する必要があります。
- 訪問時の管理指導内容
- 麻薬の保管管理状況
- 服薬状況
- 残薬の状況
- 麻薬注射剤等の併用薬剤
- 疼痛緩和等の状況
- 体調変化や副作用の有無
- 指導の要点
- 麻薬に係る服薬指導
- 残薬の適切な取扱方法
- 保管管理の指導内容
- 処方医への情報提供内容
- 情報提供の具体的内容
- 情報提供の日時や方法
- 麻薬の廃棄に関する事項(返納があった場合)
- 返納された麻薬の品目・数量
- 廃棄の日時・方法
- 立会人の氏名(2名以上)
実践のためのポイント
疼痛評価の方法
麻薬管理指導において、疼痛の評価は重要なポイントです。以下の評価スケールを活用しましょう。
- 数値評価スケール(NRS: Numerical Rating Scale)
- 0(痛みなし)~10(想像できる最大の痛み)の11段階で評価
- 「痛みの強さを0から10の数字で表すと、どのくらいですか?」と質問
- フェイススケール
- 表情のイラストで痛みを評価
- 高齢者や小児に適している
- 痛みの部位・性質・時間的変化
- 痛みの場所(体のどの部分か)
- 痛みの性質(ズキズキ、チクチク、キリキリなど)
- 痛みの時間的変化(常時、間欠的、動作時など)

ポッポ先生
疼痛評価では、一貫した評価スケールを使用することが大切です。前回の評価と今回の評価を比較することで、治療効果を客観的に判断できます。また、痛みだけでなく、ADLや睡眠状況なども評価すると良いでしょう!
よくある副作用とその対応
麻薬の主な副作用と対応策について、薬剤師として把握しておくべき内容です。
- 便秘
- 最も頻度の高い副作用
- 対応:予防的な緩下剤の使用、水分・食物繊維の摂取指導
- 悪心・嘔吐
- 治療初期に多い
- 対応:制吐剤の使用、食事の工夫
- 眠気・傾眠
- 治療初期に多いが、耐性が生じることが多い
- 対応:用量調整、日中の活動促進
- せん妄・幻覚
- 高齢者に多い
- 対応:オピオイドローテーション、抗精神病薬の検討
- 掻痒感
- 特にモルヒネで多い
- 対応:抗ヒスタミン薬の併用、オピオイドローテーション
患者さんに副作用について説明するときのポイントはありますか?

オカメインコ

ポッポ先生
副作用の説明では、まず発生頻度の高いものを中心に説明し、対処法も合わせて伝えることが大切です。特に便秘は高頻度で発生するため、予防的な対策の重要性を強調しましょう。また、副作用の多くは一時的なもので、体が慣れてくると軽減することも伝えると安心感につながります!
保管・管理に関する指導ポイント
麻薬の適切な保管・管理について、患者や家族への指導ポイントは以下の通りです。
- 保管場所
- 子どもの手の届かない場所
- 高温多湿を避ける
- 鍵のかかる場所が望ましい
- 残薬の取り扱い
- 自己判断で廃棄しない
- 不要になった麻薬は薬局に返却する
- 飲み忘れた場合の対応
- 自己判断で倍量服用しない
- 次回服用時間との関係で対応を指導
- 家族への説明
- 麻薬であることの説明
- 第三者への譲渡禁止
- 保管の重要性
他の加算等との関係
在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算との関係
在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算は、麻薬管理指導加算を算定している患者については算定できません。ただし、麻薬管理指導加算を算定する日以外の日に、在宅患者訪問薬剤管理指導料などを算定し、要件を満たすことで、在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算を算定することは可能です。
薬剤調製料の麻薬加算との関係
調剤料の麻薬加算(「調剤技術」に関するもの)と、麻薬管理指導加算(「薬学管理」に関するもの)は、それぞれ別の算定項目となりますので、要件を満たせば同時算定が可能です。
居宅療養管理指導費における麻薬管理指導加算
介護保険における居宅療養管理指導費を算定する場合も、要件を満たすことで麻薬管理指導加算を算定することができます。この場合も、医療保険における麻薬管理指導加算と同様の内容の管理・指導が求められます。

ポッポ先生
介護保険での麻薬管理指導加算と医療保険での麻薬管理指導加算は、基本的な管理内容は同じですが、算定の仕組みが異なります。介護保険と医療保険の違いを理解して適切に算定しましょう!
まとめ:今後の麻薬管理指導のあり方
麻薬管理指導加算は、単なる点数算定の枠を超えて、患者のQOL向上に直結する重要な薬学的管理です。2024年度の改定で、ガイドラインの参照や継続的なフォロー体制の明確化が図られたことからも、より質の高い麻薬管理が求められていることがわかります。
在宅医療の推進に伴い、麻薬の調剤機会も増加傾向にある中、薬剤師には専門性を活かした麻薬の適正使用に係る管理が期待されています。緩和ケアに関するガイドラインを参照し、エビデンスに基づいた管理・指導を行うことで、患者の痛みの緩和と生活の質の向上に貢献していきましょう。
また、地域支援体制加算などの施設基準にも麻薬に関する項目が設定されており、薬局全体としての麻薬管理体制の整備も重要です。薬剤師一人ひとりの知識・スキルの向上と、薬局としての体制整備の両面から、質の高い麻薬管理指導の実践を目指しましょう。

ポッポ先生
麻薬管理指導は、単に副作用のモニタリングを行うだけでなく、患者さんの痛みを適切にコントロールし、よりQOLの高い生活を送るためのサポートです。患者さん一人ひとりに合わせた丁寧な指導と継続的なフォローを心がけましょう!