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医師と議論するために必要な知識は何?
2020年の調剤報酬改定では、服用薬剤調整支援料2が新設され、薬剤師が医師へ情報提供して患者の薬物療法を適正化することが求められています。
そこで今回は、医師と議論するために必要な知識は一体なんなのかを紹介しようと思います。
松尾光浩, 大堀高志, and 篭島充. “医師は薬剤師にどのような知識を期待するのか: 新潟県上越地区におけるアンケート調査.” 日本農村医学会雑誌 69.1 (2020): 29-34.
紹介する研究について(方法)
この研究は、新潟県の総合病院に勤務する医師81名に、医薬品の安全性について薬剤師と議論する際に、薬剤師が持っていてほしい知識レベルについて調査した研究です。
- 添付文書
- インタビューフォーム
- ブルーレター、イエローレター
- 日本のガイドライン
- 欧米のガイドライン
- 最近の国内学会のトピック
- 最近の国際学会のトピック
- PMDAのトピック
- 大規模なRCTなどの臨床試験
- その他の臨床研究(後ろ向き研究など)
- UpToDateなど
上記の質問内容を①必要な知識、②把握すべき情報、③そこまで要求しない、④わからないで回答。
尚、自分の専門領域の場合と専門領域以外の場合で評価。
医師が求めている知識レベルについて(結果)
回答者は71人(87.7%)で、各設問に①必要な知識、②把握すべき情報と回答した割合を算出した。
①または②と回答した割合 | |
---|---|
添付文書 | 95.8% |
インタビューフォーム | 60.6% |
ブルーレター、イエローレター | 54.9% |
日本のガイドライン | 78.9% |
欧米のガイドライン | 32.4% |
最近の国内学会のトピック | 54.9% |
最近の国際学会のトピック | 34.0% |
PMDAのトピック | 29.6% |
大規模なRCTなどの臨床試験 | 45.1% |
その他の臨床研究(後ろ向き研究など) | 18.3% |
UpToDateなど | 26.8% |
①または②と回答した割合 | |
---|---|
添付文書 | 85.9% |
インタビューフォーム | 49.3% |
ブルーレター、イエローレター | 47.9% |
日本のガイドライン | 64.8% |
欧米のガイドライン | 25.4% |
最近の国内学会のトピック | 35.2% |
最近の国際学会のトピック | 21.1% |
PMDAのトピック | 15.5% |
大規模なRCTなどの臨床試験 | 28.2% |
その他の臨床研究(後ろ向き研究など) | 9.9% |
UpToDateなど | 18.3% |
添付文書の内容および日本のガイドラインについては、議論する際は共通の知識として必要です。また医師の専門領域について議論する際は、大規模臨床試験についても半数近くの医師が必要と考えていることから、やっぱり日頃、医学論文にもアンテナはっておいたほうがよさそうです。
あと上記の結果には記載していませんが、インタビューフォーム、ブルーレター、イエローレター、PMDAのトピックについてはわからないと回答した医師も多かったようです。(馴染みがないのかもしれないです)
本研究を踏まえて…
今回は医師が、薬剤師にどのような知識を期待するのかを紹介しました。紹介した研究は、総合病院の医師を対象としているため、開業医の医師に適用できるかは議論の余地がありそうです。
るるーしゅ
そもそも聞く耳をもっていなかったりとか…
処方元医療機関のご機嫌を損ねないように疑義照会もするなというケースや、服薬指導で余計なことを言うななどと制約を会社から強いられているケースもあるかもしれません。
冒頭にも記載しましたが服用薬剤調整支援料2が新設されているのは、国として、薬剤師にやってほしいということですからね。
さて国が求めていることと、組織が求めていることがずれている場合どうしたらいいでしょうかね?
これは残念ながら、一概には言えません。ただ患者さんの減薬したいという訴えを聞き、処方医に情報提供して減薬に成功している薬局は多くありますし、その傾向は今後の調剤報酬の流れを見てもすすむでしょう。
薬剤師の業界もまだ売り手市場ですが、都市部では買い手市場にシフトしつつあります。買い手市場になった際に、あなたは必要とされる薬剤師として選ばれる自信はありますか?
20代ならまだやる気やポテンシャルで評価されますが、30代になると実績が求められることは必然です。今の職場は将来も安泰という保証があるのなら構いませんが、そんなことはないでしょう。
るるーしゅ
大手チェーン薬局がつぶれることはまずないだろうけど、能力のない人がわがまま通せるほどの環境で働けるかは不明だと思います。
計画的偶発性理論を提唱したクランボルツ先生は、以下の言葉を残しています。
人生には保証されているものはなにひとつありません。唯一確かなことは、何もしないでいる限り、どこにもたどり着かないということです。
もし、今回の内容を読んでやばいと思ったのであれば、まずは行動してみてはいかがでしょうか?
今回紹介した研究で、専門領域で議論する際には、大規模なRCTなどの臨床試験について ①必要な知識、②把握すべき情報と回答した割合は45.1%でした。
半数近くの医師が、代表的な研究については知っておいてほしいとおもっているわけですが、薬剤師が医学論文を日常的に読んでいる割合は15%というデータもあり、なかなか乖離しています。
WEB上の論文抄読会
もし、医学論文を読むことに興味がございましたら、下記のWEB上での論文抄読会に参加してみてはいかがでしょうか?
はい、先日の記事でも書きましたが、わたしの薬剤師人生で大きな転機になったものです。病院薬剤師の桑原先生、青島先生と薬局薬剤師の山本先生が立ち上げた薬剤師のジャーナルクラブで、初心者でも難なく入っていけると思います。
あと、こちらのエビテンも紹介しておきます。上記のJJCLIPはひとつのお題に対して論文読んで、あなたならどどうする?ということを行うのに対して、、エビテンは論文の紹介および自分の見解などを紹介するあっさりとした内容です。(論文抄読会とジャーナルクラブの違いです)
どちらも月1回開催していて、参加のハードルは低いので、興味があったら参加してみてください。