厚生労働省は12月27日より、「緊急避妊薬のスイッチOTC化に係る検討会議での議論」に関するパブリックコメントを開始しています。締め切りは2023年1月31日までなので是非とも多くの方(薬剤師はもちろん、その他の医療従事者や一般の方)にもパブコメで意見をあげてほしいと思っています。
「緊急避妊薬のスイッチOTC化に係る検討会議での議論」に関する御意見の募集について
わたしは薬剤師で緊急避妊薬のスイッチOTC化に賛成の立場のため、偏った意見になると思いますが私なりの見解を述べますので元の資料と合わせて、参考にしていただければ幸いです。
目次
過去の緊急避妊薬のスイッチOTC化の議論について
緊急避妊薬のスイッチOTC化のについては2017年にも議論がされていますのでその辺を振り返ります。
過去記事でも紹介している内容ですので簡単に記載します。
その際にもパブコメが募集されて、賛成320件、反対28件と賛成多数でしたが、OTC化は見送られました。
見送られた理由は以下に記載します。
- OTC となった際は、緊急避妊薬の使用後に避妊に成功したか、失敗したかを含めて月経の状況を使用者自身で判断する必要があるが、使用者自身で判断することが困難であること。
- 本邦では、欧米と異なり、医薬品による避妊を含め性教育そのものが遅れている背景もあり、避妊薬では完全に妊娠を阻止させることはできないなどの避妊薬等に関する使用者自身のリテラシーが不十分であること。
- 薬剤師が販売する場合、女性の生殖や避妊、緊急避妊に関する専門的知識を身につけてもらう必要があること。例えば、海外の事例を参考に、BPC(Behind the pharmacy Counter)などの仕組みを創設できないかといった点については今後の検討課題である。
- 実際の処方現場では、緊急避妊薬を避妊具と同じように意識している女性が後を絶たない。OTC となった場合、インターネットでの販売も含め、安易に販売されることが懸念されるほか、悪用や濫用等の懸念があること。
- 緊急避妊薬に関する国民の認知度は、医療用医薬品であっても現時点で高いとは言えないこと。
- スイッチ OTC として承認された医薬品については、医薬品医療機器法第 4 条第 5 項第 4 号の厚生労働省令で定める期間の経過後、特段の問題がなければ、要指導医薬品から一般用医薬品へと移行される。現行制度では、劇薬や毒薬でない限り、要指導医薬品として留め置くことができないため、要指導医薬品として継続できる制度であることが必要であること。
- 本剤は高額であることから、各店舗に適切に配備できない可能性が高く、薬局によって在庫の有無がばらつく懸念があること。

るるーしゅ
強調している部分は、我々、薬局薬剤師が主に関係している部分です。
以前の課題に対して薬局側は対応できているか?
2017年のときには、薬局薬剤師には知識があるのかや在庫しておけるのかなどの課題が挙げられていましたが現時点でが多くの薬局や薬剤師が緊急避妊薬への対応が可能になっています。
2022年11月30日時点で6433店舗の薬局がオンライン診療での緊急避妊薬の調剤に対応しています。(下記のリンクのエクセルデータより作成)

るるーしゅ
日本の薬局数が約6万軒だから、10%近くの薬局が対応可能っていうのは現時点ではすごいと思います。
時間外の対応も有となる薬局は、2/3程度ですが…
各都道府県の薬局数の詳細を以下に示します。
(わたしの住む千葉県の数が薬局数からすると少ないような…)
都道府県 | 登録薬局数 |
---|---|
北海道 | 450 |
青森 | 133 |
岩手 | 91 |
宮城 | 141 |
秋田 | 75 |
山形 | 108 |
福島 | 161 |
茨城 | 179 |
栃木 | 84 |
群馬 | 103 |
埼玉 | 258 |
千葉 | 129 |
東京 | 641 |
神奈川 | 333 |
新潟 | 97 |
富山 | 54 |
石川 | 68 |
福井 | 54 |
山梨 | 70 |
長野 | 195 |
岐阜 | 54 |
静岡 | 198 |
愛知 | 90 |
三重 | 60 |
滋賀 | 59 |
京都 | 118 |
大阪 | 526 |
兵庫 | 181 |
奈良 | 44 |
和歌山 | 87 |
鳥取 | 39 |
島根 | 81 |
岡山 | 112 |
広島 | 194 |
山口 | 94 |
徳島 | 35 |
香川 | 90 |
愛媛 | 53 |
高知 | 35 |
福岡 | 235 |
佐賀 | 83 |
長崎 | 80 |
熊本 | 117 |
大分 | 22 |
宮崎 | 70 |
鹿児島 | 200 |
沖縄 | 52 |
尚、この厚生労働省に掲載されているリストは、緊急避妊薬を在庫していていつでも対応できるというところのみになっているはずです。

るるーしゅ
少し前に、このリストにのっていても在庫していない、薬剤師が異動しているなどが問題視されたので薬剤師会が無理な店舗は手を下げるように案内がありましたからね。
大手チェーン薬局の状況
オンライン診療での緊急避妊薬の調剤に対応しているチェーン薬局の数をカウントしていこうと思います。
チェーン薬局同士で他社の研修受講状況が気になると思いますし、あわよくば「〇〇はこれだけ研修受けて地域貢献しているのだから、うちも…」となっていけるといいと思っています。

るるーしゅ
厚生労働省の公開データを電話番号でマッチングして開設者を調べているだけなので、漏れもあると思いますが参考程度にはなると思います。
大手チェーン | 数 |
---|---|
日本調剤 | 118 |
アイン | 32 |
クオール | 95 |
総合メディカル | 31 |
ウエルシア | 183 |
スギ薬局 | 8 |

るるーしゅ
アインとスギ薬局が店舗数からすると、少ない印象ですね…
私の計算ミスでなければ組織としてここは力を入れていないのではないかなと思います。
スイッチOTC化しても問題は起きないのか?
つづいてスイッチOTC化した際の懸念点について触れてみようと思います。
海外の薬局での緊急避妊薬の販売状況などをPubMedで調べていたら、不適切な購入事例があったり、個人薬局よりチェーン薬局のほうが在庫しているなどの報告もあり、日本でも同様のことは起きるかもしれません。
そして緊急避妊薬を薬局で販売できるようになっても、まだ緊急避妊薬のアクセスへの障壁があるといった内容も散見されています。

るるーしゅ
日本でのスイッチOTC化は全薬局ではなく、研修受講した薬局のみだろうから、いくらかは大丈夫だと信じたいところです。
というわけで結論
2017年のときと違って、緊急避妊薬の知識のある薬剤師や緊急避妊薬を在庫している薬局が増えています。
薬局で販売できるようになったからと言って、緊急避妊薬へのアクセスが大幅に改善されるかは不明ですが、少なくとも現状より良くなると思っています。
会議の中では、年間に6~7万人の女性が強制性交等の被害に遭っているとの委員からの発言がありました。また女性の14人に1人は無理やり性交をさせられた経験があり、そのうち6割は誰にも相談していないとの報告もあります。

このような状況下で、利便性をあげつつ、安全性も担保するには緊急避妊薬の研修を受講した薬局のみでのスイッチOTC化が落としどころではないかなと思っています。

るるーしゅ
交渉術としてはドア・イン・ザ・フェイス使って、全薬局で販売させろといって、譲歩として研修受講しただけという方法でもいいのかもしれませんが…
今回は2017年時の課題にも「このようにして薬局は対応できています」ということを数字を使って示すことができますので、前回のときのように賛成多数でも見送られるという可能性は低いのではないかと思っています。
このように記載すると、「自分が声をあげなくても大丈夫か」と思ってしまうかもしれませんが、パブコメでたくさんの件数を示すことも、この緊急避妊薬のスイッチOTC化に多くの人が関心があるということにつながるので是非ともパブコメ提出してほしいなと思います。

るるーしゅ
みんなが注目していると知ったら、不合理な結論を出しづらくなるのでは?と思っています。
下記のリンクから送ることができますのでどうぞよろしくお願い致します