先日、感染症学会の新型コロナウイルス感染症に関するシンポジウムがWEB上で開催されていました。
その中で、新型コロナウイルス感染症の治療薬の候補についても紹介されていましたので備忘録としてまとめるのと、海外でどのような薬剤が期待されているのかも含めて紹介しようと思います。
本記事を読んでわかること
- 今の日本で使われている新型コロナウイルス感染症の治療薬
- 海外で期待されている新型コロナウイルス感染症の治療薬
目次
新型コロナウイルス感染症の治療薬の現状について
現状、有効性がRCTで確認できている薬剤はありません。
一般の方が期待する服用すれば病気から全ての人が回復するような薬はないということです。
日本で使用されている治療薬候補
薬剤名 | 理論 | 備考 |
---|---|---|
ロピナビル・リトナビル | プロテアーゼ阻害剤 | 抗HIV薬 |
ファビピラビル | RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬 | 新型インフルエンザ用 (季節性には効果なし?) |
シクレソニド | 抗ウイルス作用と抗炎症作用 | 気管支喘息 |
カモスタット | セリンプロテアーゼの阻害 | 逆流性食道炎、慢性膵炎 (日本、米国では未承認) |
ヒドロキシクロロキン | 不特定の抗ウイルス効果 | エリテマトーデスの治療、 関節リウマチの治療、 (マラリアの治療/予防 ) |
レムデシビル | RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬 | エボラウイルス感染症 |
ロピナビル・リトナビル
カトレア配合錠®はSARSの時に使用され、その際のデータをリバビリンと比較した結果、死亡率やARDS発症率が低いことから、新型コロナウイルス感染症にも効果があるのでは?ということで使用されていたようです。
急性呼吸窮迫症候群(きゅうせいこきゅうきゅうはくしょうこうぐん:Acute Respiratory Distress Syndrome(以下ARDS))とは、重症肺炎、敗血症や外傷などの様々な疾患が原因となり重度の呼吸不全となる症状の総称です。
重症肺炎、敗血症や外傷などによって、炎症性細胞が活性化され、肺の組織である肺胞や毛細血管に傷害を与えます。その結果、肺に水がたまり、重度の呼吸不全が引き起こされます。
ARDSは一般的に、原因となる疾患や外傷が発生してから24~48時間以内に発生すると言われています。また、発症後の死亡率は全体の30~58%とも言われており、極めて予後が悪い疾患です。
重症患者に対して、ロピナビル・リトナビルVS標準治療を実施した内容がNEJMにて発表されていましたが標準治療に関して利点を示しませんでした。
Cao, Bin, et al. “A trial of lopinavir–ritonavir in adults hospitalized with severe Covid-19.” New England Journal of Medicine (2020).PMID: 32187464
ファビピラビル
アビガン錠®ですね、新型インフルエンザ用で適応が通っており、エボラのときも騒がれましたが、結局エボラに対しても有効性に関するデータは示していないですよね(確かマウスだけなはずです)
催奇形性、高尿酸血症、肝機能障害の有害事象への懸念があります。
研究結果としては、上記のカトレア配合錠と比較したオープンラベルの研究が掲載されたり、撤回されたりしていますが、早期にウイルス陰性化、CT所見が有意に改善とのことです。
Cai, Qingxian, et al. “Experimental treatment with favipiravir for COVID-19: an open-label control study.” Engineering (2020).
また日本では発売されていませんが、ウミフェノビル( Arbidol®)とのRCTの研究がされています。主要評価項目の臨床改善割合に有意差はないですが、発熱や咳に対しては有意差がでていたようです。
Chen, Chang, et al. “Favipiravir versus Arbidol for COVID-19: a randomized clinical trial.” medRxiv (2020).
シクレソニド
シクレソニド(オルベスコ®)は吸入ステロイドですが、どうやら抗ウイルス効果もあるようですよね。
現状、比較した研究結果がでていないようなので、有効性に関しては評価が難しいと思います。
ただ吸入ステロイドで喘息の患者が使用していた実績があり、安全性に関しては問題ないと思います。
カモスタット
カモスタット(フオイパン®)ですが、セリンプロテアーゼ阻害作用によりSARS-CoV-2の細胞侵入をブロックする可能性のあるそうです。
現在、研究結果はでていなく、NCT04338906とNCT04321096の研究計画が登録されています。
ヒドロキシクロロキン
つづいてトランプ大統領がGameChangerと言っていたヒドロキシクロロキンですね。抗マラリア薬といっていたので日本にはないのかと思っていましたが、プラケニル®でしたね。
先日のシンポジウムの中では、投与量が難しいと話していました。
有効性を検討した研究は、軽度~中等度の方を対象に標準治療と比較しましたが、差はなかったようです。
Tang, Wei, et al. “Hydroxychloroquine in patients with COVID-19: an open-label, randomized, controlled trial.” medRxiv (2020).
またヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンの併用によるQT延長の有害事象に注意が必要です。
Molina, Jean Michel, et al. “No evidence of rapid antiviral clearance or clinical benefit with the combination of hydroxychloroquine and azithromycin in patients with severe COVID-19 infection.” Med Mal Infect (2020): 30085-8.
レムデシビル
レムデシビル はエボラウイルス用に作成された薬のようです。
有効性に関しては他剤と比較したデータがないため評価が難しいですが、4月にNEJMに発表されたデータがなかなか世界的に物議を醸しだしているみたいです。
Grein, Jonathan, et al. “Compassionate Use of Remdesivir for Patients with Severe Covid-19.” New England Journal of Medicine (2020).

るるーしゅ
これは、大曲先生も著者に名前を連ねているね。
海外での治療薬候補
海外で、潜在的に新型コロナウイルス感染症に有効ではないか?ということを治験を予定している薬剤について気になった薬剤のみ紹介いたします。
薬剤名 | 理論 | 備考 |
---|---|---|
ウミフェノビル ( Arbidol ®) | ウイルスエンベロープ結合の破壊、 ウイルス侵入の防止 | インフルエンザ感染症 (米国では未承認) |
アスコルビン酸 | – | ビタミンC欠乏症 |
Aviptadil | 肺におけるNMDA誘発性のカ スパーゼ-3活性化の防止、 IL-6およびTNF-α産生の阻害 | サルコイド、肺線維症、気管支痙攣、 勃起不全(ヨーロッパ、米国では未承認) |
アジスロマイシン | – | さまざまな細菌感染 |
コルヒチン | サイトカイン応答の媒介の 可能性 | 痛風、家族性地中海熱 |
フルボキサミン | – | 強迫性障害 |
ロサルタン | – | 高血圧 |
ナプロキセン | 抗炎症 | 様々な痛み |
ニタゾキソニド | – | 寄生虫症の下痢 |
一酸化窒素 | – | 新生児呼吸不全 |
ニボルマブ | – | 様々ながん |
オセルタミビル | 抗ウイルス効果 | インフルエンザ |
サルグラモスチム | 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子 | 白血病、骨髄移植 |
トシリズマブ | インターロイキン-6(IL-6)阻害 | サイトカイン放出症候群、 巨細胞性動脈炎、若年性関節リウマチ、 慢性関節リウマチ、 全身発症若年性慢性関節炎 |
バルサルタン | – | 高血圧、心不全 |